3章 チコリータ、ゲットだぜ!

「イーブイの体温、心地いい……」
「ブイ?」
「もう大丈夫。心配しないで」

見上げて心配するイーブイにミズカは頭を撫でながら口角を上げた。

「すっかりイーブイもミズカに懐いてるよな」
「まだ2回しか、ここに来てないんだけどね」
「でも不思議よね。マサラタウンなら、なんでオーキド博士は最初の3匹にしなかったのかしら?」
「ゼニガメとかってこと?」
「そうそう」

イーブイを見つめながら、カスミが疑問をぶつける。イーブイは目を逸らした。ミズカは首を傾げる。

「たまたまいなかったんじゃないのか」
「3匹とも?」
「事情はわからないけど、あたしはイーブイで良かったと思うよ。こっちに来ていない間は一緒にいられなくてごめんだけど」
「ブイブイ」

気にしていないと首を横に振るイーブイは、ミズカの腕の中に顔を埋める。

「確かに、ピカチュウが違う世界に行くからって何日も会えないのは寂しいな」
「あんたとピカチュウはお互い隣にいないとソワソワしそうだものね」

カスミがピカチュウを眺める。ミズカは、うんうんと頷いた。

「仲の良さは近さだけではないからな。ポケモンとトレーナーの数だけ在り方は変わる」

会話に入りながら、タケシがココアをミズカに出す。「有難う」とお礼をいうとタケシは口角を上げた。

「在り方……」

ミズカはチコリータを見つめる。チコリータにモンスターボールの中に入られるのを嫌がられたのを思い出す。傷つくつもりはなかったが、ちょっとショックだった自分がいる。

仲間になって欲しいと言ったわけではないが、仲間になって欲しくないとは思ってない。

しかし、タケシのいう在り方を考えると、チコリータの心の傷を癒やすのには、人間と関わらないというのもあるのかもしれない。人間との関わりは、怪我を治療するまでにしたほうが、チコリータも幸せなのかもしれない。

朝食後、ミズカ達はポケモンセンターに着いた。気持ちが急いで足まで早くなっていたのか。タケシの見立てでは3時頃到着だったが、2時前には到着した。

ミズカはチコリータを抱きかかえ、受付に走る。

「ジョーイさん! この子をお願いします!!」

ジョーイはチコリータの憔悴しきった具合を見て、ミズカを厳しく見た。

「ダメじゃない! こんなに、ポケモンを傷つけちゃ!」

ジョーイは、チコリータをミズカのポケモンだと思ったようだ。ミズカはチコリータを助けるということしか考えてなかった。自分のポケモンだと勘違いされて当たり前なことに今気づく。
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