30章 戦慄の戦い

「もう見つかったみたいだね」
「説明の途中だけど大丈夫?」

ヒカリが聞くと、シゲルはなんとも言えないような表情をした。

「久しぶりだな。ミズカ」
「なんで……」
「なんで? お前を殺すためだよ」

不適な笑みを浮かべ、ミズカに言った。鼓動が高鳴る。

「なんで、そんなにミズカを殺したいんだよ」

サトシはムッとした表情で父、ノリタカを見た。

「理由を言う必要はない。強いて言えば、恨んでいるからだな」

それに腹が立ち、サトシは身を乗り出すように前に出ようとした。しかし、ミズカは止める。代わりに自分が前に出た。

「理由なんかどうだっていいよ。……確かに、あたしは生まれちゃいけなかったかもしれない。でも……、今は生きてる。生きてる以上、あたしは死にたくない。それに人殺しなんて間違ってる」

ミズカは、自分の思っていることを全てを言った。ノリタカはミズカを一瞥する。何を考えているかわからない。表情がない。次の瞬間、ふっと笑った。

「まあいいだろう。今は殺さないでいてやるよ。息子にトラウマを植え付けるのも気が引ける。……ただし」

ノリタカは、ミズカのところへ寄った。そして、腕を引っ張り、ミズカの耳に自分の口を近づける。

「仲間がどうなってもいいならな」

ミズカにしか聞こえない声で脅された。ミズカはごくりと息を飲む。

「夜までなら待ってやるよ」

ノリタカは行ってしまった。ミズカは硬直している。全身が冷え切っていく。とても冗談とは思えない。何より自分を本気で殺そうとしている奴なのだから。

頭を殴られた記憶やエーフィを奪われた記憶が蘇る。このまでされていて、冗談だろうとは、まさか思わない。

「……ミズカ?」

ヒカリに呼ばれ、我に返った。ミズカは、眉間にシワを寄せる。

「……夜まで待つって言っていたが、何と言われたんだ」

さすがタケシだ。鋭いところをついてきた。ミズカは思わず目を逸らす。顔を歪めた。

「父さんに、なんて言われたんだよ」

サトシに肩を掴まれる。ミズカの瞳が揺れる。サトシを見ることができず、下を向いた。ゆっくりと口を開ける。

「な……が……」
「え?」
「仲間が……、どうなってもいいなら、殺さないって……」

そサトシ達は驚いた表情でミズカを見た。サトシは掴んだ肩が震えていることに気づく。

「そんな……、卑怯だわ」

ヒカリは顔を歪め言った。サトシは確かにノリタカは卑怯だと思った。だが、このミズカの震えは何なのだろう。さっきまで立ち向かうつもりでいたはずだ。

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