29章 再会、ポケモンダンス団!

「なぁ、ミズカ」
「ん? 何?」

サトシに話かけられ、ピチューとピカチュウからサトシに視点を移した。

「なんでピチューとミミロルはさっき喧嘩してたんだ?」
「……わかろうよ。少しくらい……」

呆れた表情でミズカは言った。原因を話しても、鈍感なサトシはよくわからずに終わるのは目に見えている。話すのが面倒臭い。

「サトシには、まだ早いな」

後ろから、タケシが出てきた。ミズカは思わず笑う。

「たしかに」
「なんだよ! ミズカだって同い年だろ!」
「ここではね。でも、もとの世界では、あたしは14歳で、タケシと変わらないよ?」
「う……」

たしかに、ミズカは見た目は10歳だが、中身は14歳くらいだ。サトシは何も言い返せなかった。

「それにこの問題は、男と女で早さが違うの。ヒカリはわかってるもんね」
「えぇ」

ヒカリはニコッと笑った。

「え……、わからないのって俺だけ?」
「うん」

ミズカ達は頷いた。

「さて、そろそろ寝ようか」

ミズカは逃げるように寝袋に入った。ヒカリとタケシもそうする。

「え、おい!」

一人残されたサトシを見て、隣でピカチュウとピチュー、エーフィは苦笑した。ピチューも眠いのか、ミズカの寝袋の中に入る。エーフィはその寝袋の隣で眠り始めた。

「……なんなんだよ……。……寝るか」
「ピカピカ」

これ以上、ミズカ達は答えてくれそうにない。サトシも諦めてピカチュウと寝袋の中へ入って眠りについた。しばらくすると、皆の寝息が聞こえてくる。

ミズカはサトシ達が眠りについたのを感じながら、ゆっくりと目を開けた。目の前にピチューがいる。

寝るつもりだったが、怖くて眠れなかった。寝ている間に父親が来るのではないか。発信機は持っているが、寝ている間に来られては意味がない。

――情けないな……。

ミズカは深くため息をついた。ヘリコプターや、崖から平気で落ちた自分とは大違いだ。それが凄く情けない。

「いつから怖がりになったんだろう」

ボソッと呟いた。怖い、とにかく怖かった。自分に未来がないかもしれない。そう考えるだけで、ゾッと鳥肌が立つ。

「ピチュピ」
「フィ」
「……エーフィ、ピチュー……起きてたの?」

どうやら二匹は起きていたらしく、ミズカの質問に頷いた。

「フィ、フィ!」
「ピチュピチュ! ピチュピ」

頑張れと励まされているようだった。ミズカは一人じゃないことに気づく。こんな近くに、エーフィやピチューがいるではないか。

「ありがとう。頑張らなくちゃね」

ミズカは微笑みを浮かべ、二匹を撫でた。

「なんか安心してきた。二人ともありがとう。それじゃおやすみ」

ミズカは、寝袋に深く入ると眠り始めた。それを見て、エーフィとピチューは顔を見合わせ、安心したのか寝ることにした。
9/9ページ
スキ