29章 再会、ポケモンダンス団!

「ピチューをまた旅に連れて行かない?」

エリコにそう言われたのは、片付けを手伝っている夕方だった。えっ? と思わずミズカは聞き返す。

「ピチュー、あなたにダンスが上手くなったところを見せたいって思っていたのよ。それから、彼女、ダンスを生かしてバトルも強くなった。強くなったら、あなたとまた旅をしたいって思ってたみたい」
「そうですか……」
「どう? あなたもまた旅をしたいんじゃない? 前に会った時は、かなり別れが悲しそうに見えたわよ」

エリコは優しい笑顔でミズカに言った。確かに、ピチューと別れたときは辛かった。今だってポケモンダンス団と別れたら、次いつ会えるかわからない。

「でも、迷惑が掛かるんじゃ……」
「たしかに、ちょっと困るけど、このダンス団はポケモンの気持ちを一番にしているの」

エリコのモットーにミズカは困った表情を見せた。ポケモンの気持ちを大事にする。それはミズカが大事にしていることでもあった。

そして、自分もまたピチューと旅がしたい。しかし、問題がある。父親の事だ。それを考えるとどうしても、一緒に旅がしたいとは言えなかった。

「どうしたの? 嫌な……の?」

ミズカの様子に気づき、エリコはそう聞いた。ミズカはハッとし、首を横に振る。

「違うんです……。あたしもピチューと旅をしたいという気持ちはとてもあります」
「だったら……」
「……隠さない方が良いですよね。今、連れて行けない理由を話します」

ミズカは父親のことを話した。そして、ピチューがロケット団で実験されていた経験があることを話した。辛い経験をしたピチューに、また辛い経験はさせたくない。

エリコは驚いた表情で彼女を見る。

「だから、ピチューを連れて行くわけにはいかないんです」

ミズカの言葉にエリコは何も言えなくなった。大切だから、連れて行けない。その気持ちがよく伝わってくる。

「ピチューをこれからもよろしくお願いします!」
「頑張ってね」
「はい」

エリコの応援にミズカは少し困った表情で頷いた。

ちょうど、その頃サトシ達も話をしていた。

「……そっか。それじゃあミズカは、ピチューを連れて行くなんて言えないよね」
「あぁ。ピチューがそう望んでるなら、ミズカも喜んでそうしたいんだろうけど」

アイミの納得した言葉に、サトシは頷いた。

「もし、エリコさんに聞かれても、断っているだろうな」

タケシが言うと、アイミは暗い表情になった。

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