3章 チコリータ、ゲットだぜ!

「あんた、ほんとに大丈夫なの?」
「うん! とにかく、この子を早く助けなきゃね!」

カスミの心配にミズカは笑って答えた。とにかく助けたかった。体の傷も、心の傷も……。ミズカが今できることは、サトシ達の所へ戻って、事情を話し、一刻も早くポケモンセンターに着けるようにすることだ。

途中でカスミにベストは脱ぐように言った。ベストをカスミに預けるといくらか身体が軽くなった。

ふらつく足を何とか踏ん張って、サトシ達のところへ戻る。

サトシ達もすでに起きていた。サトシとタケシはビショ濡れのミズカをまじまじと見る。

「どうしたんだよ、それ」

サトシがミズカの服を指差す。タケシが大きなタオルを2枚渡してきた。まずはチコリータをタオルで包み、自分の寝袋の上に寝かせる。そして、ようやく自分の冷えた身体を拭きながら、ミズカはあった出来事を話した。

「それで、ミズカもチコリータもビショビショだったのか。無事で良かったぜ」
「ピカピカ」

サトシとピカチュウがホッと胸を撫でおろす。ピカチュウの隣でトゲピーが目を擦っていた。まだ眠いようだ。

「うん……。でもチコリータが……」
「そしたら、今日は朝食後すぐにポケモンセンターに向かおう」

タケシがミズカを宥めるように言う。急いでも良いことはない。それにミズカだって、大丈夫だと言い張ってはいるが、唇が紫になっていて、相当冷えてしまっているように見える。

だからこそ、タケシは温まってほしかった。ミズカは素直に頷く。タケシの気持ちは汲み取った。ミズカも途中で倒れて、迷惑を掛け、チコリータの治療が遅くなるのは本意ではない。

ミズカはリュックから替えのTシャツに着替えると、席に着く。ベストは、カスミが木に下げて干してくれていた。

「温かい飲み物はなにが良い?」
「ココアある?」
「あぁ」

ココアがあるのか不明だったが、どうやらあるらしい。

「顔色良くなったな」
「悪かった?」

向かいに座りながら、サトシがミズカの顔色を窺う。ミズカは顔色が悪かった自覚はなかったらしく、首を傾げる。ココアを待っていると、肩にふわりと毛布が掛かった。

「悪かったわよ。まだ冷えてるでしょ」

毛布を掛けてくれたカスミが隣に座る。ピカチュウとトゲピーと遊んでいたイーブイが膝に乗ってくる。もふもふしていて温かい。
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