「……負けた感じ出さないでよ」
「え？」
「あたしは、サトシとやったバトルで一回しか勝ったことないのに……。納得いかない……」

ムッとした表情でサトシを見る。サトシはハッとした。そして、頭を軽く下げて、素直に「ごめん……」と謝った。反応がない。恐る恐るミズカを顔を上げてミズカを見ると、ニヤニヤしていた。

「なんで笑ってんだよ？」
「え、サトシにようやくライバルとして認められたんだなぁって嬉しかったの」

サトシが、自分に負けたと思っていたことが少し嬉しかった。それだけ、ライバル視されていると言うことだ。

サトシは少し恥ずかしくなって目を逸らした。

なぜライバル意識を持っているかは、もうわかっている。ミズカが妹だから。急に兄にはなったが、ミズカを守るつもりでいた。それが妹の方がジム戦を勝ち抜いていたら、悔しいし、面白くない。
　　
「兄妹に負けると悔しいでしょ？　あたしも弟とゲームして負けたときはめっちゃ悔しい」

ミズカはそれを見透かしたように言う。サトシは尚更ミズカを見られなくなった。ミズカは面白がりながら、向こうの世界へのドアを出す。

「そうだ。……ヒカリ」
「何？」
「今度、ポッチャマと遊ばせてね！」

ポッチャマとは一瞬会っただけで、遊べていない。本当はもう少しいたいが、早く帰らないと向こうの世界の生活に支障が出そうだ。

ドアを開ける。ヒカリはニコリと笑って頷いた。

「それじゃあね」

ミズカはドアの向こうへ消え、もとの世界へ戻って行った。