クロガネシティ。明日のジムに備えて、ポケモンセンターでどうジムリーダーヒョウタを攻略するかを考えているサトシ……。

『色んなトレーナーがいるんだなぁって思って……』

さっきのヒカリの言葉を思い出した。実は先程、サトシはシンオウでのライバル、シンジに会って、彼のジム戦を観ていたのだ。その後、ポケモンセンターでも会ったのだが、かなり馬鹿にされた。

サトシは、シンジのバトル方法には納得していなかった。ポケモンを平気で使えないとか言うから余計かもしれない。しかも、さっきはジムで戦わせていたマリルリをすぐに手放していた。そこで、ヒカリはそんな言葉を発したのだ。

「色んなトレーナーか」

考えてみれば、自分の父親もトレーナーのはずだ。シンジのことを悪くばかり言ってられない。そんなことを思いながら、ジム戦をどう挑むか考えていると、もう夕飯前になっていた。

「ミズカ！　どうしたの？」

ヒカリの声が聞こえた。サトシは後ろを振り向く。すると、ミズカがいた。サトシは、二人の所へ行く。

「あ、サトシ。ジムはどう？　明日でしょ？」
「知ってるのか。色々と考えてる所なんだ。ミズカは何しに来たんだ？」
「これ」

ミズカは、銀色に光る薄いケースを出した。サトシとヒカリは、驚いた表情を浮かべる。

「……おい、それどうしたんだよ」
「どうしたもこうしたもジムに挑戦しようと思って……。驚いた？」

ニヤリと笑いながら、ミズカは薄いバッジケースを見せる。ミズカはジムに挑戦しようとしているのだ。ちなみに、ヒカリはミズカがリーグに出れないことをタケシから聞いている。

そもそも、この状況で公に出るという考えもないのだが。

「短時間でバトルに強くなるには、ジム戦が一番かなと思って……。身分はオーキド博士に頼んだの」
「そっか……。お互い、頑張ろうぜ！」

一歩進んだミズカの行動にサトシは口角を上げた。ミズカは頷く。

「じゃあ、あたしやる事があるから。あ、お父さんに見つかる事はないから、心配しないで！」

そう言って、ミズカは走ってポケモンセンターを後にした。

「……本当に大丈夫なのかしら？」
「オーキド博士に頼んだと言っていたから、何か知ってるんじゃないのか」

ヒカリが言うと、いつの間にかタケシが後ろにいた。さりげなくだったため、二人はビビる。

「で、電話してみるか」
「ピカピカ」

という事で、サトシ達はオーキドに連絡した。

「大丈夫じゃよ。ミズカには、ある物をリュックに入れたんじゃ」
「ある物？」
「そうじゃ、発信器みたいな物でな、他に手鏡を持ってる人間に半径一キロ範囲で反応する物じゃ」

サトシ達は、「へぇ」と呟いた。


「それで、ミズカがやることって？」
「チルタリスにゴッドバードを覚えさせたいそうじゃ」
「そうか、それでミズカは、ポケモンがゴッドバードを覚えるのに一番良いコツを教えてもらうために、博士に連絡したわけですね」

タケシが言った。博士は頷く。ミズカは、ジム戦のためにチルタリスにゴッドバードを覚えさせたかったのだ。そして、今は練習中なわけである。

「わかりました。ありがとうございます」

納得して、サトシは電話を切った。