27章 覚悟

「レントラーの決心は固いみたいだぜ?」

サトシが言った。レントラーは頷く。

「いや、でも……」

黄色い瞳が見つめてくる。レントラーは本気らしかった。今回は明確にレントラーがゲットされたいと思う要因が見つからない。

だから、余計に迷ってしまっていた。

「二人とも消灯の時間だから戻りなさい」

ジョーイが二人を呼びに来た。歩いてくると、レントラーに気づく。

「あら、レントラー」
「ジョーイさん、知ってるんですか?」
「ここら辺では有名な子よ。たまにこの入り口に来て、トレーナー選びをしてるみたいなの」
「トレーナー選び?」

ミズカが首を傾げると、ジョーイは微笑む。

「この子、ここしか知らないから、違うところへ行きたいみたい。でも、なかなかお眼鏡にかなうトレーナーは見つからなかったみたい。トレーナーから誘うこともあったんだけれど……、理想が高いのね」

そう言われて、ミズカはもう一度レントラーを見る。レントラーはミズカに擦り寄ってきた。ジョーイはにこりと笑った。

「連れて行ってあげて? やっと見つかったトレーナーみたいだから」

ジョーイに言われて、ミズカは困った。まさか命を狙われているので、連れていけませんとは言えない。到頭ミズカは折れた。

「……わかった。これから、お願い出来る?」
「ガウ!」
「じゃあ……」

モンスターボールを出した。少し戸惑う。本当にゲットしていいのだろうかと考える。


「我慢する事ないと思うぜ。だけどその分、ポケモン達を守らなくちゃな」

サトシにそう言われ、ミズカは頷いた。そして、レントラーの頬に、自分の頬をくっつけながら、頭を撫でる。レントラーは嬉しそうに鳴いた。

覚悟を決め、ゲットした。

「守らなくちゃね」

ギュッと、モンスターボールを握った。体にも力が入る。
ミズカとサトシは、ジョーイの後をついて、ポケモンセンターに戻った。

「……あたし、お父さんをどうしたいって何も思わないって話したでしょ」

部屋に戻る途中、ミズカが口を開けた。サトシは黙って聞く。

「どうしたいって思わないなら、強くなることは本当に必要なのか考えてたんだ。でも違った。皆を守るために強くなるんだよね。もしまたお父さんと接触する事があったら、懲らしめるんじゃなくて、これは間違いだってわかってもらう。あたしは、生きたいって、死にたくないって言う。わかってもらえるまで、ずっと……」
「俺も戦うぜ! 絶対にわかってもらおう」

サトシの言葉にミズカは頷いた。いつまでも逃げてはいられない。

「絶対、わかってもらうんだ……」

そんなところで部屋に着いた。泣き疲れからか、欠伸が出てくる。長い一日が終わった。

「あたし、もとの世界に戻るね……」

部屋に入って、すぐにミズカはもとの世界へ帰って行った。もちろん、今回は手鏡を持って帰った。
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