27章 覚悟

「ちょっと良いか?」
「……え、別に良いけど……?」
「それじゃあ、あたし達は、先に戻ってるわ」

ミズカがサトシに返事をすると、ヒカリとタケシは行ってしまった。エーフィとピカチュウは、ミズカとサトシを見守ることにした。

変な空気が流れる。なんとなく感じている気まずさ。

「あのさ……」
「仲間としても、妹としても受け入れられないなら、あたしはそれでいいよ」

サトシの言いたい事は、なんとなくわかっていた。ミズカだって、同じ気持ちだ。そして、ポケモン達と旅をする事を決めた今、彼女もサトシと話そうと思っていた。

サトシの答えを待とうかと思ったのだが、それでは結局、サトシに頼ってしまっていると思った。サトシが悩む必要はない。もし妹として受け入れられない理由があるとすれば、今までの旅仲間としての関係が壊れてしまう気がするからだ。

それはサトシだけでは解決できるものではない。ミズカが言って初めて解決することだった。

サトシは素直に自分の気持ちを打ち明ける。

「俺さ。正直自分が、ミズカを妹として見たいのか、それとも仲間として見たいのか、よくわからないんだ」  

気持ちが迷子している。ミズカは小さく頷いた。

「あたしは……。サトシが良ければ、仲間としても、兄としても受け入れたい。サトシが言ってくれたでしょ? あたし達は、ずっと旅してた。異母兄妹だって知ったからって、もう互いを知ってる。一緒にいて楽しいことを知ってる。でも、2年前の記憶も戻ってるから、ああ、お兄ちゃんなんだなって思うこともある。サトシは思い出してないけど、突然妹なんてできて嫌だったはずなのに、あたしと遊んでくれてさ。……だから、どちらをなんて選べない」

ミズカはきっぱりと言った。

「サトシは今までの関係を崩したくないんだよね。……それは、あたしもちょっと怖い」

ミズカは苦笑する。そして、しゃがむと足元にいるエーフィの頭を撫でる。

「なんかポケモンの進化みたいだよね」
「え?」
「たとえばさ、コイキングがギャラドスになるみたいな衝撃? 色も形も全然違っちゃうの」

サトシはミズカを見つめる。コイキングがギャラドス……、凄い例えをし出した。

「でもさ、ポケモンの進化って受け入れられるでしょ? どんな姿になったって、根本は変わらないから」

ミズカはサトシを見上げた。根本は変わらない。そうだった。ミズカが妹だろうと、友達だろうと、根本は変わらない。ミズカはミズカ。サトシもサトシだ。

元の形には戻せない。ミズカが兄として見ていると言った時点で、その選択肢はない。先に進むしかない。でも、根本が変わらなければ、次の形は二人の望んだ形になるはずだ。
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