27章 覚悟

「どうしてあたし達を囲んでるの?」

ミズカは叫んでレントラーに話しかけた。ヒカリはさらに驚き、ミズカを見る。レントラーの一匹が出てきた。すると、そのレントラーの後ろから、コリンクやルクシオ達も出てくる。

「ガウ!」

レントラーは吠える。威嚇しているらしい。しかし、少し怯えた様子もあった。エーフィが構えるのをやめる。そんなエーフィの様子を見て、ミズカはレントラーに近づいた。

「ミズカ、危ないわ」
「平気、平気」

ミズカは、ニッとヒカリに笑いかける。そして、そっとレントラーの頭に触れる。攻撃はして来ない。そのまま優しく撫でた。

「ごめんね。ここ、あなた達の縄張りでしょ? あたし達、道に迷って、間違えて入って来ちゃったの……」
「ガウ……」

レントラーはそれを聞くと大人しくなった。

「すごい!」

その姿に安心したのか。ヒカリもレントラーに近づいた。

「あたし、電気タイプとは相性が良いの」
「へぇ……」

ヒカリは世の中色々な人がいるものだなと思った。

「……やば。皆逃げて!」
「え?」
「来た……」
「来たって今度は本当に……」

ヒカリに聞かれ、ゆっくりと頷く。その途端、一匹のコリンクが宙に浮いた。ミズカはこの技をよく知っている。サイコキネシスだ。

――やばい、地面に叩きつけられる。

そう思った時には、もうコリンクに向かって走り始めていた。関係のない彼らにダメージは受けさせたくない。コリンクが、地面に叩きつけられた瞬間、ミズカはコリンクの下にいてキャッチした。コリンクは助かったが、逆に下敷きになったミズカが叩きつけられたくらいのダメージを受ける。

「ミズカ!」

ヒカリが近寄る。

「う……」

ミズカは、ノソッと立ち上がる。思った以上に衝撃が大きかった。
「大丈夫?」
「う……、うん。まあ……」
「なんだ、ずいぶんこの世界に来てた割には弱いな」
「関係ないポケモン達を巻き込まないで!」

出てきたノリタカを睨み付ける。彼はニヤッと笑った。

「体が……、動かない……」

ミズカは父親の隣を見た。そこには、コダックがいる。コダック……。記憶にある。ノリタカのポケモンだ。体が動かないのは、金縛りだろう。コリンクを攻撃したのも、コダックのようだった。エーフィまで金縛りを受けていて、動けそうにない。

「ポケモンを出そうとしたって無駄だ」
「ヒカリ、レントラー達を連れて逃げて」

ヒカリやレントラー達は動けるようだった。ノリタカもそこまで鬼ではないようだ。だったら、ここはエーフィと何とかするしかない。

「でも、ミズカが……」
「いいから。なんとかする。あなた達を巻き込みたくないの」

そう言われ、ヒカリは返す言葉が見つからない。しかし、レントラーはミズカの前に立った。

「レントラー……。ダメ、早く逃げ……」
「ガウ!」

レントラーは吠えた。ミズカは驚いた表情で見る。

「レントラー、もしかして、あたしの指示を待ってる?」

ミズカが聞くと、レントラーは頷いた。ミズカはごくりと息を飲む。考えている暇はない。レントラーが手伝ってくれるなら、一か八かだ。ミズカは、レントラーに指示を出す事にした。
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