27章 覚悟

それは、研究所で博士が事情を説明しているはずだから。それがあって、ミズカのリュックにモンスターボールが入っているということは、ポケモン達はとっくに覚悟を決めている。

だから、何かあってもポケモン達が守ってくれることは間違いなかった。

「大丈夫、大丈夫。そんな照れる事ないわ」

戸惑ったサトシの表情は、珍しく情けなく、らしくない顔だ。サトシには申し訳ないが、ちょっと面白くて、タケシとヒカリは笑いを堪える。彼はため息をついた。サトシはそれどころではない。

「わからないんだ。どうミズカに接すればいいか。多分、妹って意識で話してるんだろうけど、それを受け止められない自分もいる」

ミズカの気持ちがわかったから、サトシはまた、ポケモン世界に来るように言った。それは今まで友達だったからだ。ミズカと友達としての関係がサトシにはとても心地よかった。

だったら、ミズカを向こうの世界へ迎えに行ったとき、友達だとハッキリ言えばよかったのだが、サトシは気づかないうちにブレーキを掛けていた。

俺たち、友達だろ?

ミズカにそう伝えるつもりだった。だが、言えない上に、周りから変化を言われる。自分の無意識の変化に戸惑う。

悪くないことだとは思う。でも、妹として受け入れたら、果たしてミズカとの関係は今まで通り同じにできるのだろうか。今度こそ崩れるのではないか。そんな考えが過る。

「だから、さっきから口数が少ないのか」
「何かサトシとミズカ、お互いにまだぎこちないわ」

サトシもわかっていることを指摘される。いつも通りには行かない。

「つい最近まで、仲間だったのにな……」

サトシは力なく笑った。ピカチュウが心配した表情で彼を見る。

「ミズカもお前と同じ気持ちだと思うぞ。たとえ、兄妹みたいに仲が良かったとしても難しい問題だ。それにミズカの状況を考えるとサトシに遠慮しているのもあるんじゃないか?」
「だよな……」

サトシは再度ため息をついた。遠慮されている。サトシが混乱しているから、そこには触れないでくれている。

「それに、またこの世界に来て良かったのかどうかも、わからないかもしれないわね」
「そんなことないのにな……」
「ピカピ、ピカチュウ」

ピカチュウが肩をトントンと叩く。だったら、ミズカにそれを正直に打ち明ければいいじゃないか。そう思って、ミズカが出て行ったドアを指差す。

「そうだな。ミズカと話さないとわかんないよな」

サトシは、ピカチュウを見て、ミズカと向き合おうと決めたらしい。立ち上がった。

「あたしも行くわ!」
「皆で行こう」

心細くなっているサトシの気持ちを汲み取り、ヒカリもタケシも立ち上がった。3人でミズカのところへ行く事にした。
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