27章 覚悟

「サトシもミズカも無茶なところが一番似ているんだから、二人でバカみたいなことしないでね」
「バカみたいなこと……」

強く言うハルカに、ミズカは顔をしかめる。バカみたいなことはした記憶がない。

「それじゃあ、バイバイ!」

あまりわかっていなさそうなミズカに、諦めてハルカに手を振る。その隣でシュウは苦笑しながら手を振った。

ミズカも手を振り返すと、どちらからともなく電話を切った。 

「……ふう」

ミズカは、ため息をついた。エーフィのモンスターボールを握る。まだエーフィとは話していない。怒っているだろうなぁと思う。

だが、エーフィ……、いや、他のポケモンたちには話さなきゃならないことがある。エーフィに謝って終わりの話ではなかった。どう話そうか。

それにミズカは自分がどうしたいのか、何をしたいのかわからなかった。強さばかりでないことは十分わかってはいる。が、今回はそうもいかない。なにせ、自分の命が懸かっている。仲間だって巻き込むかもしれない。

「どうすれば良いんだろう……」

強くなっただけでは、きっと父親には勝てないだろう。こっちは、ノリタカを殺そうなんて思っていない。向こうが本気だったら、本当は本気で向かわないといけないことはわかっているのだが。

だ考えれば考えるほど、自分がわからなくなった。

「どうしたんだ?」

黙って部屋に戻ってきたミズカに、サトシが聞いた。ミズカはハッとする。

「あ……、ごめん。考え事……」

考えていて、サトシ達が視界に入っていなかった。床に座る。

「考え事……?」

ヒカリが顔を覗かせた。ミズカは頷く。

「なんか……、わけわからなくなって……」

一息つき、話し始めた。

「お父さん……、あたしを殺そうとしているでしょ? だったら、勿論あたしも強くならなきゃいけない。それはわかってる。だけど、強くなったからって、お父さんをどうしたいって何も思わないの……。向こうが本気で来るなら、あたしも本気で立ち向かう覚悟が必要だと思ってるんだけど……」

覚悟が多分できていない。だから、定まらない。それは父に立ち向かうことの他に、ポケモン達に対してでもあった。
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