「おかえりなさい」

ヒカリとタケシは帰って来たサトシとシゲル、ミズカを笑顔で迎えた。ミズカは少し躊躇うが、サトシがポンと肩を叩いて２人の前に促した。

ちなみに時刻は朝１０時。ミズカはいつものことだが、サトシとシゲルは変な感覚だった。

「……ただいま。それから、心配かけてごめん」

頭を下げる。二人は首を横に振った。

「大丈夫、大丈夫！」

ヒカリは嬉しそうな表情で言った。ミズカは顔をしかめる。

「どうしたの？」

ヒカリは首を傾げた。

「ヒカリの大丈夫って……、あてにならないんじゃなかった？」

ミズカが言うと、皆は吹き出した。ヒカリは、少しムッとした表情をつくる。しかし、それよりも、何故、ミズカがヒカリについてこんなに知っているのか。彼女はアニメを見られないはずだ。

「ミズカはヒカリのことをよく知らないはずだったが……」
「あたし、今、アニメ見てるよ」

タケシが聞くと、あっさり答えた。実は、不登校になる前、シンオウ地方のアニメが始まった日。ミズカは、タカナオが見ると言うので見た。

すると、新しいポケモンばかりで、悔しくなり、ミズカは家族の目も気にせず見るようになったのだ。別に家族に迷惑をかけているわけではない。自分の部屋にテレビはある。だから、気楽に見られると言うわけだ。

「なるほどな」

ミズカから説明され、サトシ達は納得した表情を浮かべた。こんなふうに会話ができることにミズカは嬉しさを感じる一方、戻ってきて良かったのかと考えていた。

この笑顔を壊してしまうのではないかと。

――どうか、何もありませんように……。

仲間に笑顔を見せながら、ミズカは不安を抱えていた。

「ミズカ」

タケシに呼ばれハッとした。また、以前のように自分は作り笑いをしている。いや、今では、本当に心から自分は笑っているのかさえわからなくなるときがある。

「何？」
「ハルカが電話をするようにって言ってたぞ」

タケシは、そう言って電話番号の書いてあるメモをミズカに渡した。

「ありがとう」

気を取り直して、ミズカはハルカへ連絡することにした。