26章 本当の気持ち

「僕達は、この世界では存在しない。それは、この世界の血が流れていないからなんだ。つまり本当はここに居てはいけない……。存在してはならない。君は、この世界とあちらの世界の血も混ざっている。だから、どちらの世界にも存在していられるんだよ」
「それで……、昨日と今日は振り出しに? だったら、お父さんは……」

話が矛盾している。前の父親はポケモン世界の人間なのだ。ということは彼がポケモン世界に行けば、その分振り出しになるのではないか。

「いや……、彼は長い間、ポケモン世界を捨てて、この世界に居すぎた。今は、血がポケモン世界の人、しかし、この世界の住民ということさ」
「じゃあ……」
「彼は、どちらの世界も自由に行けるということだね」

シゲルの説明で十分に理解は出来た。しかし、『ポケモン世界を捨てた』という言葉に疑問を抱く。

『こいつさえ生まれなければ、俺はこの世界にすぐ戻って来ました』

父親の言葉が、頭で再生され、耳元で囁かれた気分になった。鳥肌が立ってくる。ひとまず、置いといた。

「……ねぇ」
「どうしたんだ?」

サトシが聞く。

「……あたし、また同じ風に学校に……、行くわけ?」

さっきのシゲルの発言から考えると、また、あの重苦しい空気の教室にまた入るわけだ。

「そういうことになるね」

シゲルは苦笑した。ミズカが教室に入ったところは見ていないが、サトシやカスミから事情は聞いている。今日はミズカの久々の登校日。それを思うと少し同情した。

ミズカは大きくため息をつく。彼女にとって学校に行くのはそれだけ大変で覚悟がいるのだ。

「まあ……、それは後で考えよっと……」

考えるだけで疲れる気がした。

「ピカピ。ピカチュウ」

しばらく黙っていたピカチュウがサトシを呼んだ。戻るなら早くしたい。ピカチュウはエーフィとミズカを会わせたかった。

「そうだな。ミズカ、行こうぜ」
「うん」

ミズカは元気に頷いた。ヒカリやタケシ、エーフィや他のポケモン達も気になる。三人は仲間の待つ世界へと行った。


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