26章 本当の気持ち

「あったんだ……」
「サトシ……」

呆れた表情でミズカとシゲルはサトシを見た。彼は苦笑する。ピカチュウは危険を察していたのか、サトシの肩の上だ。危機回避能力が凄い。

「てか……、吹き出したお茶、ちゃんと拭いてね?」

そう言いながら、サトシにティッシュ箱を渡した。

「悪い悪い……。整理ついてないのに、こんなことやってて動揺した」

箱を受け取り、濡れたところを拭く。じゃあ、ミズカを妹として見ているかは、微妙なところだ。今のは本当に無自覚だった。

「さてと、あたしはジムがあるから帰るわね」

サトシを横目にカスミは立ち上がる。カスミは安心していた。ミズカもサトシも、整理はついていないだろうが、時期に解決するように見えた。

カスミは、荷物から手鏡を出す。

「手鏡って、いくつもあるの?」

驚いた表情で、ミズカはカスミが持っている手鏡を指した。カスミは、頷きながらドアを開けた。ミズカも立ち上がる。

「カスミ……、ありがとね!」

お礼を言うと、カスミはミズカをギュッと抱きしめた。ミズカは胸に込み上げるものを感じる。

「迷った時はいつでも連絡しなさいよ! 一人で抱え込まないこと!」
「うん」
「……あと、恋の方もね」

カスミはニッと笑い、シゲルをちらりと見た。ミズカの顔はボッと赤くなる。本人を前に余計意識してしまった。

「それじゃあね」

カスミはクスクス笑いながら、ポケモン世界へ帰って行った。これはミズカへ仕返しだ。ホウエン地方の旅のとき、カスミが来た日に、ミズカは同じ事をしカスミにした。カスミがサトシのことが好きだと知っていて……。

ドアはもう目の前から消えている。

「……好きな人いるのかい?」
「へ? あ、あぁ……。ま、まあね……」

どんなつもりで聞いたのかわからないミズカは動揺する。シゲルに聞かれ、顔が赤くなりながらも何とか頷いた。まともにシゲルの顔が見れない。

シゲルはといえば、ミズカがそんなに顔を赤くする人物が誰なのか気になった。聞いてみようかと口を開くが、

「ところでシゲル。あのことは言わないのか?」

鈍感サトシに遮られた。

「あ、あぁ。そうだったね」

シゲルはサトシに邪魔をされた。けれど、聞いたところでどうするんだとも思う。一方、ミズカは、ホッとした表情を浮かべた。サトシの鈍感もたまには役に立つ事があるものだ。

「あのことって?」
「僕達は元々この世界の人間ではない。だから、僕らが帰って明日になれば、また、ミズカは昨日から始めることになるんだ。僕達は昨日から来ていたからね」
「……どういうこと?」

イマイチ理解出来なかった。
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