26章 本当の気持ち
「……まず、サトシに謝らないと。酷いこと言ってごめんなさい」
「いいよ。俺を怒らせるためにわざと言ったんだろ?」
「……ごめん。本当は縁なんて切りたくなかった。でも、サトシはもしかしたらあたしと一緒にいるのは辛いんじゃないかって思ったし、一緒にいたら嫌でも父親の嫌なところを見ることになるから辛いだろうなって思った」
「確かに父親がミズカに酷いことをすれば辛いだろうけど、それに対して何もできない方が辛いぜ?」
サトシの素直な言葉にミズカは顔を歪めた。その返事は自分といるのは辛くないと言ってくれている。サトシを見つめる。彼は口角を上げて頷いた。
辛いことは一緒に受け止める。そんな表情だ。
「あたし……、またポケモン世界に行きたい」
ポケモン世界へ行かれなくなってから何度思っただろう。いつ実父に会い、殺されるのか。不安で夜も眠れなかった。不安な夜は、自分に生まれて来てはいけなかった奴なんだから 殺されても仕方ないと言い聞かせるしかなかった。
「仲間をどうでもいいなんて思ったことはない。みんなのこと、本当に大好き。でも、だからこそ……、もし皆にも危害が及んだらって思っちゃう。……怖い」
本心を話した。いつの間にかカスミはミズカの手を包み込むように握っていた。
「……でも、正直一人でいるのも怖い。だから、ポケモン世界に来なくなったのに、この世界に来てくれて嬉しかった」
「ずっと、一人で怖かっただろ?」
サトシに言われて、素直に頷く。まだ迷っている。だが、突き放しても彼らが帰ってくれないことをミズカはわかっていた。きっと、嫌だと言ったら、一生説得してくる。
「よく頑張ったな」
サトシがポンポンとミズカの頭を撫でる。ミズカは一瞬キョトンとするが、途端に笑い出した。カスミもシゲルも笑いを堪えている。
「どうしたんだよ?」
「ぷっ……。だって、だってサトシ……ぷははははは!!」
しまいに高い声で笑い転げた。堪えていた二人も笑い始める。ピカチュウも笑う。
「な、なんだよ!」
「……だって、……いきなり兄貴ぶるんだもん」
笑いをやっとのことで抑える。
「え……」
サトシは全く自覚がなかったようだった。サトシから頭を撫でられたことなんてない。今までミズカに対して対等に話していた。しかし、今の発言は明らかに今までの発言とは異なる。サトシの優しさを感じつつも、つい笑ってしまった。だが、不思議とミズカは嫌な感じが全くなかった。
「そうか……? そんなつもりは……」
サトシは口にお茶を運びながら考える。いや、確かにミズカの頭を撫でたことはない。気づいたらやっていた。別に変な意味はない。が、自分がしっかりしなければという感覚はあった。
自分がミズカを守ってやると。そんな気持ちは初めてだ。それが兄としての感覚なら、あるいは……。
「あんた、そんなつもりあったでしょ」
カスミからのツッコミで、豪快にサトシはお茶を吹いた。
「いいよ。俺を怒らせるためにわざと言ったんだろ?」
「……ごめん。本当は縁なんて切りたくなかった。でも、サトシはもしかしたらあたしと一緒にいるのは辛いんじゃないかって思ったし、一緒にいたら嫌でも父親の嫌なところを見ることになるから辛いだろうなって思った」
「確かに父親がミズカに酷いことをすれば辛いだろうけど、それに対して何もできない方が辛いぜ?」
サトシの素直な言葉にミズカは顔を歪めた。その返事は自分といるのは辛くないと言ってくれている。サトシを見つめる。彼は口角を上げて頷いた。
辛いことは一緒に受け止める。そんな表情だ。
「あたし……、またポケモン世界に行きたい」
ポケモン世界へ行かれなくなってから何度思っただろう。いつ実父に会い、殺されるのか。不安で夜も眠れなかった。不安な夜は、自分に生まれて来てはいけなかった奴なんだから 殺されても仕方ないと言い聞かせるしかなかった。
「仲間をどうでもいいなんて思ったことはない。みんなのこと、本当に大好き。でも、だからこそ……、もし皆にも危害が及んだらって思っちゃう。……怖い」
本心を話した。いつの間にかカスミはミズカの手を包み込むように握っていた。
「……でも、正直一人でいるのも怖い。だから、ポケモン世界に来なくなったのに、この世界に来てくれて嬉しかった」
「ずっと、一人で怖かっただろ?」
サトシに言われて、素直に頷く。まだ迷っている。だが、突き放しても彼らが帰ってくれないことをミズカはわかっていた。きっと、嫌だと言ったら、一生説得してくる。
「よく頑張ったな」
サトシがポンポンとミズカの頭を撫でる。ミズカは一瞬キョトンとするが、途端に笑い出した。カスミもシゲルも笑いを堪えている。
「どうしたんだよ?」
「ぷっ……。だって、だってサトシ……ぷははははは!!」
しまいに高い声で笑い転げた。堪えていた二人も笑い始める。ピカチュウも笑う。
「な、なんだよ!」
「……だって、……いきなり兄貴ぶるんだもん」
笑いをやっとのことで抑える。
「え……」
サトシは全く自覚がなかったようだった。サトシから頭を撫でられたことなんてない。今までミズカに対して対等に話していた。しかし、今の発言は明らかに今までの発言とは異なる。サトシの優しさを感じつつも、つい笑ってしまった。だが、不思議とミズカは嫌な感じが全くなかった。
「そうか……? そんなつもりは……」
サトシは口にお茶を運びながら考える。いや、確かにミズカの頭を撫でたことはない。気づいたらやっていた。別に変な意味はない。が、自分がしっかりしなければという感覚はあった。
自分がミズカを守ってやると。そんな気持ちは初めてだ。それが兄としての感覚なら、あるいは……。
「あんた、そんなつもりあったでしょ」
カスミからのツッコミで、豪快にサトシはお茶を吹いた。