26章 本当の気持ち

「おかえりなさい。あんた、友達連れてきたの?」

二階に上がると、母親がいた。ミズカの家は三階建て。三階にミズカの部屋がある。

「三人とも、ちょっとここで待ってて!」

二階のリビングに鞄を放り投げると、ミズカは3人を置いて、ドタドタと部屋へ駆け込んだ。三人はそんなミズカを見て唖然とする。

「ごめんね。ミズカの部屋汚いから……。片付けに行ったのよ」

ミズカの母に言われ、三人は苦笑した。実はミズカ、自分の部屋は汚い。友達が来ると決まったときに、ダッシュで片付けている。

「この部屋、すごく可愛いですね!」

リビングを見回しながらカスミが言った。リビングにはピンクのカーテンに、オシャレなシャンデリア。結構、メルヘンチックだった。まるで人形の家である。

「でしょう!」
「こんな家に住んでみたい!」

キラキラした目でカスミは言った。置いてある小物がいちいち可愛い。ミズカの母はニコリと笑う。

「ピンク好きなの。この家に引っ越してから、リビングは自分の趣味に合わせちゃおうと思って……! 家族以外からは褒められるのよ」
「うわ。リビングの話? もう勘弁してよ……。恥ずかしいから……」

頭を搔きながら、ミズカが三階から降りてきた。片付けは終わったらしい。

「いいじゃない。あたしの趣味なんだから。ミズカ、お菓子や飲み物を用意してあげなさいよ」
「今、やってますけど……」

ミズカは、すでにオボンを出し、お茶やらコップやら、お菓子を乗せていた。

「ダメだ……。お菓子乗らない……」
「じゃあ、ほら、お願いね」

ミズカが言うと、母親はお菓子を一番近くにいるカスミに渡した。カスミは苦笑する。ミズカは母の行動に呆れながら、三階へ上がって行った。三人も着いて行く。ミズカの部屋は至って普通だった。メルヘンチックでもなんでもない。

「な~んだ。ミズカは可愛い部屋にしないのね」
「普通が一番。あんなのが部屋だったら、落ち着かないって」

ミズカは肩を竦めた。そして、テーブルにオボンを置き、お茶をコップに注ぐ。

「座りなよ」

とりあえず三人を座らせる。何を話せば良いかわからない。ミズカは黙って立ち上がると、部屋のドアをゆっくりと閉めた。話は漏れないようにしたい。

「ミズカ」
「何?」
「ここにピカチュウはいなかったかい?」

やっと口を開いたのはシゲルだった。ミズカは彼に聞かれ、首を横に振る。

「……まさか、連れてきたの?」
「この部屋にいるはずなんだが」
「……いないよ?」

ピカチュウはどこへ行ったのか。ミズカが首を傾げていると、二階から、

「ただいま~」

と、タカナオの声がした。
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