26章 本当の気持ち

「気まずい?」

昼休み。シゲルはミズカに話しかけた。

「シゲル……」
「気まずいのは僕ともか」

シゲルは苦笑すると、隣の席に座る。昼食を終えた男子の席。外へ遊びに行ったらしい。シゲルは身体をミズカへ向けた。

「すまない。ちゃんと話せず。僕の態度で不安にさせてしまったと思う」
「え……」
「君がどう思っているかはわからない。だが、僕はあのときの子が君で良かったと思ってる」

シゲルの言葉にミズカは目をパチクリさせた。シゲルは微笑む。

「君じゃなかったら、ずっと引きずっていた。だから、君は僕に気まずさなんて感じなくていい」

シゲルの言葉に鼻の奥がツンとする。それを言いにわざわざサトシ達と来てくれたのか。

「何話してるの?」

リンが顔を覗かせて来た。ミズカはハッとする。

「ミズカと会えたの久しぶりだっからね。近況報告をしていたんだ」

シゲルが言うと、リンは「へぇ」と感心しながら、自分席に座った。前に座るリンは少しニヤニヤしていた。

「シゲル達ってどこから来たの?」
「どこだと思う?」

さすがシゲルだ。答えられない質問を質問で返した。ミズカとシゲルの目が合う。ミズカは、小さく頷いた。

「んー、東京!」
「違う。埼玉だよ」

ミズカが答えるとシゲルはそれに合わせて微笑んで頷く。うまく誤魔化せ、ミズカはホッとする。

「それじゃ、僕は席に戻るよ」
「うん」

シゲルは自分の席に戻って行った。リンがシゲルの背を眺めながら、口を開く。

「埼玉は確かにちょっと遠くてなかなか会えない距離だね」
「……えっ?」

ミズカは目をしばたかせる。リンはミズカを見ると、彼女はニヤリと口角を上げた。

「ミズカが前に言ってた好きな人、シゲルでしょ?」

ミズカはズバリ言われて顔を赤らめた。まさか、こんなすぐにバレるとは思っていない。

「ポケモンのシゲルに似てるって話してたもんね? まさか、名前まで一緒だとは思わなかったけど」
「……」
「へぇ、ここではあちこちに話してるのね」
「か、カスミ!」

面白そうだと思ったのか、カスミが来た。ミズカの顔はますます赤くなっていく。

「ミズカ、恋バナ全然してくれないのよー。ミズカはシゲルのこと何て話してるの?」
「カスミ……。私まだシゲルだってリンには言ってない」

まさかシゲルに聞こえてないだろうな、とミズカはシゲルをちらっと見た。シゲルはサトシや他の男子と話していて、こちらのことは全く聞こえてなさそうだ。

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