26章 本当の気持ち

ミズカは静かに学校の校舎を見上げた。少し足がすくむ。今日は不登校になって初めての登校だ。この一ヶ月半ほど、必死でポケモン世界を忘れようと、引きこもりを止め、外を散歩するようになった。

カウンセリングにも行き、後ろ向きな自分にも気づいた。学校に行きたくて、でも恐くてを繰り返し、やっとの思いで学校に来た。一番心配してくれた友達のリンにも連絡した。

テニス部員には会わないように、少し遅れて来た。校舎に入ると教室までの道のりは長かった。遅れて来たため、廊下も階段も静寂に包まれ、自分の足音だけが響く。

――そう言えば、今は学習タイムだっけ。

ミズカの学校では、最初に10分間、学習タイムを行う。今はその時間に当たり、みんな勉強や読書をしているため、尚更、静かだ。

入ったらどうなるのかと、教室に入った時のクラスメイトの反応が気になった。もう先生は来ることを知っている。

ガラッと教室のドアを開けた。反応は……ない。何人かは此方を見たが、黙ったままで重苦しい空気が流れる。

――なんだ。この重苦しい空気は……。あたし、何かした? てか、席、どこだし……。

この空気に耐えられないが、席がわからない。とりあえず、空いた席を探すが、空いた席は、自分のを含め四つあった。ミズカは怪訝になる。別に休んだ生徒がいるわけではないようだ。 

「ミズカ、こっち」

やっと呼ばれた。呼んだのは、一年の時から同じクラスのリン。メールをしておいたからか、席が近いからか、手招きしてくれた。リンに呼ばれホッとして、彼女が指している後ろの席へ行く。

窓側の席から二番目の列、前から四番目の席を座った。学習タイムはあっという間に過ぎた。ホッとしたせいか力が抜ける。しかし、問題はそこからだった。

学習タイムが終わり、次はホームルーム。

「実は本日だけ、転入生という子が三人います」

先生の言葉に、ミズカは驚いた。クラスメイトも聞かされていなかったのか騒然としている。

クラスの男子一人が、

「俺、見た! 男子二人に女子一人だろ?」

と、いい始める。

「なんで、このクラスに三人?」

別の男子が、最もな質問をする。

「三人は仲が良いらしくて……。今日はミズカも来たし、5組で受け持つことにしたの」

先生は答えた。クラスメイト達は歓声を上げる。

「今日だけだけど、仲良くしてあげて。それじゃあ、三人とも入っていいわよ」

そう言うと、今日だけ転入生はぞろぞろと教室に入ってきた。3人の顔を見た瞬間ミズカは固まった。目の前には、サトシ、シゲル、そしてカスミが立っている。

一瞬、何かの間違えかと目を擦ったが、やはり紛れもない仲間の姿だった。
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