26章 本当の気持ち

「だけど……」
「時間がない。今、ミズカが父親に見つかれば……、彼女に為す術はない。二度と会えなくなる」

サトシはハッとした表情を見せる。そうだ。手紙に書いてあった。彼が躊躇している時間はない。

サトシは拳を握りしめた。怖がっている場合じゃない。とにかく今はミズカを説得して、一緒に立ち向かおうと伝えることが先だ。

「行く。俺……、行くぜ!」
「決まりだね」
「ヒカリとタケシも来るだろ?」

サトシの言葉に二人は首を横に振った。

「あたし達は、いいわ」
「サトシ、お前が連れて来い」

気を遣ってくれたらしい。サトシも素直に、うん、と頷いた。

「よし、行くぜ! ……あ」
「どうしたんだい?」
「どうやってミズカが住んでる世界に行くんだ?」

サトシに聞かれた、シゲルは大きくため息をついた。ヒカリもタケシも苦笑している。

「行く方法ならあるだろ……」
「サトシ……。あたしがあなたに手鏡を渡した意味わかってなかったの……?」
「え……? どういうことだよ?」

タケシ、ヒカリに言われても、まだわかっていない。最終的には肩に乗っているピカチュウまでため息をつく。

「ミズカは今まで、どうやって、この世界に来てたんだい?」
「あ……」

やっとわかったらしい。そこからは早かった。そそくさとリュックから手鏡を出した。

「俺達をミズカの住んでる世界に行かせてくれ!」

すると、ドアが出てくる。サトシとシゲルは顔を見合わせると、ドアの向こうへ進んで行った。
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