25章 突きつけられる真実

「大丈夫? 顔……真っ青よ?」

ヒカリは聞くが、彼女からの返事はない。ミズカは心配されている自分が情けなくなった。心配されるのはサトシの方だ。自分じゃない。

「ミズカ、どうしたの?」

ヒカリにもう一度聞かれ、やっとミズカは顔を上げた。

「やめなよ。生まれちゃいけなかった奴の心配なんか」

嘲笑して、ミズカは立ち上がった。まるで人が変わったみたいに、彼女の表情は冷めきっていた。その姿を見てヒカリもタケシもすっかり硬直してしまった。

そんな二人に、相当酷い顔をしているんだろうなとミズカは思う。自分がしっかり説明しないといけない。だが、二人の顔を見ると、その気も失せる。こんな話、困らせるのがオチだ。それに自分には慰めてもらう権利なんてない。

ミズカはここに居場所を感じられず、黙って部屋を出た。フラフラと歩いて着いたのは、エーフィの場所。ミズカはエーフィの背を撫でながら、思い出に耽った。

何も知らなかったときが恋しい。

夢中でバトルして、ポケモンたちと触れ合って、仲間たちと笑い合って……。あの頃の何も知らなかったときの自分に戻りたい。

しかし、現実はそんなに甘くない。自分が呼ばれた理由はそれなりにあるのをわかっていたはずだ。大人の事情という言葉に隠されて、自分は守られていた。

オーキドが呼んだ理由を、今のミズカはちゃんと理解していた。サトシはきっとそこまで気が回っていないだろうが、オーキドと父親のやりとりを思い出した今、ミズカにはちゃんとわかっていた。

ミズカはため息をつく。

父がなぜ、サトシではなくミズカに接触したのか。それは、ミズカを恨んでいるからだ。自分が生まれてしまったことで、サトシのところに帰れなくなったことを恨まれている。

ミズカは治療室の壁に寄りかかった。恨まれているから、なぜ接触するのか。そんなの一つしかない。ノリタカはミズカを殺そうとしている。しかも、このポケモン世界で。

もとの世界で生涯を終えようとしているのなら、ポケモン世界でミズカを殺したほうが都合がいい。何も罪に囚われることがない。ミズカが行方不明になるだけだ。

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