3章 チコリータ、ゲットだぜ!

「それから、今回のチコリータの場合は消毒が必要だ。だから、傷薬を使った。もし、ポケモン達が疲れたのであれば、この木の実を与えると良い」
「木の実?」
「オレンの実やオボンの実なんかは、そこら辺に成っていることが多いな。あとは、麻痺にはクラボの実、毒にはモモンの実があれば回復できる」

知らない木の実の名前だ。ゲームでも出てきた記憶はない。タケシは青いみかんのような形の実を持ってきた。

「これがオレンの実だ」
「回復できるの?」

聞けば、タケシは口角を上げて「あぁ」と頷く。ミズカはイーブイを出した。

「イーブイ、これ食べれる?」

イーブイに与えれば、ぺろりと食べてしまった。まだ欲しそうなので、後2つほどあげると、イーブイはあっという間に元気になる。ミズカは目を見開く。

「すごい……」
「イーブイ、バトルしていたのか」
「うん。野生をゲットしようとして失敗しちゃった」

ミズカは苦笑した。

「でも、回復する木の実があるなら良かった。戻りながら、他にどんな木の実があるのか教えて?」
「もちろん」

タケシは頷くと戻りながら、木の実の特徴を教えてくれた。それから、町についたら救急箱を買おうと言われた。お金がないと思ったが、リュックを見るとオーキドがお小遣いを用意してくれている。こんな至れり尽くせりで良いのかと思いながら、ミズカは有難く使わせてもらうことにした。

戻ってきてから、ミズカはずっとチコリータのそばにいた。

ーー大丈夫かな……、チコリータ……。

ミズカは心配で堪らなかった。身体に無数の傷跡がある。それは数か所ではなく、数え切れないくらいだ。いまだに眠っているチコリータの様子から、瀕死状態だったことがわかる。

しばらくして、サトシとカスミが来た。タケシは昼食を作っている。カスミはミズカの隣に座った。チコリータを見つめるミズカの隣でイーブイも心配そうにしている。

「酷い傷ね……」

カスミは、それしか言葉が見つからなかった。大丈夫と軽い言葉も掛けられない。タケシの治療だけでは足りないから、ポケモンセンターを目指すというのは、そういうことだ。

「うん……」
「ミズカ、そろそろ昼食だぜ?」
「うん……」
「ミズカ……?」
「うん……」

ミズカの生返事に、サトシとカスミは困った顔で顔を見合わせた。たとえ、野生のポケモンでも心配する。ミズカがずっと側にいるから見守っているだけで。

「ねぇ……」

ミズカはチコリータを見つめたまま、口を開く。

「何だ?」
「どうしたのよ」

声の震えるミズカに2人とも顔を覗かせる。

「どうやったら、こんなに傷つくのかな……?」

2人はハッとした。ミズカはチコリータの心配だけをしているわけではなかった。なぜ傷ついたのか。それが知りたかったようだ。
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