「さて、着いた」

一階に行くと母がいた。ミズカは少し後ろめたい気分になる。心配をかけたくなかった。母はなんと思っているだろう。こんな情けない自分を。結局、格好なんてつかなかった。部活だって辞めておいた方が良かったのかもしれないと今更になって思う。

ミズカが母から目を逸らす。アマノはポンと思ってもみなかったことを口にした。

「休んでいいわよ」
「……はい？」

また先生から、わけのわからない発言を聞き、首を傾げるミズカ。ますます混乱する。

「人生、八十年生きるうちの一ヶ月や二ヶ月休んだって良いじゃない！　ほんの一瞬でしょ」
「……先生」
「部活だ大会だ、って言う前に自分の身体、自分の心よ。我慢して我慢してじゃ、人間やっていかれないわよ」

ミズカは目に涙が溜まって行くのを感じた。縛り付けられたものが一気に解放され身体が軽くなる。

そこで気づいた。ミズカは休みたかったのだと。心が悲鳴を上げていたのだと。頑張りすぎていたことに気づいた。

今まで、自分が我慢することが当たり前だった。どこまでが限界かを知らなかった。その限界をアマノが教えてくれた。もとの世界のことは考えない。それが今のミズカにとって、最善の休養方法。