24章 攫われたエーフィ

「シゲルもミズカに対して、嫌な印象はなくなったみたいね」
「そうなのかな? 自信ない」
「ミズカのこと気遣ってくれたわけでしょう? それに嫌いだったら、わざわざミズカの代わりにエーフィを探すなんて言わないわよ。きっと、昔に会ったときの印象と変わったんじゃない?」

そう言われれば、確かにそうかもしれない。思えば、ジョウトリーグで会ったときから、表情は柔らかくなっていた。

昔に何かあったことに気づいてからは、また嫌われていると思っていたが。ミズカは今は友達として思ってくれていたら嬉しいな、と思う。

「でも良かったじゃない」

カスミはニヤニヤしながら腕を組む。ミズカは首を傾げた。

「……何が?」
「だって、シゲルの前で倒れたんでしょう? お姫様抱っこでベッドに運ばれたんじゃないの!?」
「いや、それはない」

テンションの上がるカスミをよそに、ミズカはサラッと否定した。

「なんで?」
「シゲル、エレキブル持ってるし。多分、エレキブルであたしを運んでくれたんだと思うよ」
「なんだ、つまんないの」
「つまんないって何! 酷くない?」

威勢よくカスミに言ったミズカだが、ため息をついた。あまりにも、自分が情けなく思えてきたのだ。

実際、シゲルは結果的にミズカをお姫様抱っこし、その上、告白までしてくれていたのだが、ミズカには記憶がない。なんの進展もなかったと思っている。

「何はともあれ、あんた、無茶しないでよ! ……なんか嫌な予感するから」
「や、やめてよ! 変なこと言うの……!」

嫌な予感と言われて誰もいい気分はしない。

「……な、なるべく、気をつけるよ」

珍しくミズカは素直に話した。カスミは、安心した表情を浮かべる。そのあとはもとの世界の話などをした。

「それじゃ」

あまり電話が長くなっても悪いだろう。そう思いミズカは電話を切った。これから、ミズカの新たな戦いが幕を開けた。
14/14ページ
スキ