24章 攫われたエーフィ
「すみません。シンオウ地方に行く船のチケットを用意して頂いて……。それに、こんな服まで……」
一週間後、ミズカはオーキド研究所の玄関にいた。洋服、靴、リュックは全て新しい。洋服は、黒いハイネックの半袖の上に灰色のベスト。ベストは薄くて編み目がきめ細かなため、嵩張ることはなかった。それに前と同じ黒い半ズボンだ。靴は黒いスニーカーである。
「いいんじゃよ。気をつけるんじゃぞ」
「はい!」
「サトシと合流したら、連絡してくるとよいじゃろう。お前さん達に全てを教えるわい」
ミズカは驚いた表情をする。まさか教えてもらえるとは思っていなかった。逆に言えば、教えないといけない事態になっているということだ。
「……はい! いってきます」
ミズカは表情を引き締めて、旅に出た。
船に乗ると、心地よい風が気持ちを落ち着かせた。が、いつもならエーフィが一緒にいたな。いつもならエーフィと次の旅はどんな旅になるかとワクワクしていたな。バトルも楽しみだね、と笑い合っていたな。そんな風に考えてしまい、結局気持ちはちゃんとは落ち着かなかった。
少し躊躇いつつ、カスミに連絡することにした。
「……ミズカ! 元気にしてた?」
ちょうど暇だったらしく、カスミは電話がミズカからで喜ぶ。その笑顔を壊してしまうのかと思いながら、ミズカは素直に遭ったことを全部話した。
無論、カスミは驚いた表情で彼女を見ている。
「あんた、それで頭は大丈夫なの?」
「まあね。すごい回復力でしょ!」
「サトシに似てね」
ミズカの調子に乗った姿に、カスミは呆れた表情で受け応えする。こうやって軽口を叩かないと、エーフィのことが心配で押し潰されそうなんだろうなとカスミは悟った。
だったら、これまでに聞けなかった話でもしてみようか。カスミはさっきの話から、ずいぶん聞かなかったことを聞いてみることにした。
「で。シゲルはどうなのよ?」
「へ? 元気だよ」
「そうじゃなくて……、好きなんでしょ?」
不意に聞かれて、ミズカは顔を真っ赤にした。ブンブンと首を横に振っているミズカに、ああ、やっぱりとカスミは思った。
つい最近、ハルカと連絡を取ったときに、ミズカの好きな人の話になったのだ。そのときの内容があまりにもシゲルの話だった。
きっと何も知らないハルカだから話せたのだろう。しかし、ミズカはカスミとも連絡をしっかり取り合っているとは思っていなかった。
「あんた……、わかりやすいわね」
「な……。別に良いでしょ! その話は」
「一時期、シゲルシゲルだったものねぇ? 嫌われてるかもとか、会いたいとか」
ますますミズカは顔を真っ赤にしていく。そして、目を逸らす。
「知ってたなら言ってくれれば良かったのに……」
「そのときは自覚なかったでしょうが。まさかシゲルがミズカに対してどう思ってるかわからないのに、自覚させられるほど無神経じゃないわよ」
カスミの思いを聞いて、ミズカは口角を上げる。自覚がなかったところまでわかっているとは思わなかった。敢えて言わないでくれたカスミの優しさに感謝する。
一週間後、ミズカはオーキド研究所の玄関にいた。洋服、靴、リュックは全て新しい。洋服は、黒いハイネックの半袖の上に灰色のベスト。ベストは薄くて編み目がきめ細かなため、嵩張ることはなかった。それに前と同じ黒い半ズボンだ。靴は黒いスニーカーである。
「いいんじゃよ。気をつけるんじゃぞ」
「はい!」
「サトシと合流したら、連絡してくるとよいじゃろう。お前さん達に全てを教えるわい」
ミズカは驚いた表情をする。まさか教えてもらえるとは思っていなかった。逆に言えば、教えないといけない事態になっているということだ。
「……はい! いってきます」
ミズカは表情を引き締めて、旅に出た。
船に乗ると、心地よい風が気持ちを落ち着かせた。が、いつもならエーフィが一緒にいたな。いつもならエーフィと次の旅はどんな旅になるかとワクワクしていたな。バトルも楽しみだね、と笑い合っていたな。そんな風に考えてしまい、結局気持ちはちゃんとは落ち着かなかった。
少し躊躇いつつ、カスミに連絡することにした。
「……ミズカ! 元気にしてた?」
ちょうど暇だったらしく、カスミは電話がミズカからで喜ぶ。その笑顔を壊してしまうのかと思いながら、ミズカは素直に遭ったことを全部話した。
無論、カスミは驚いた表情で彼女を見ている。
「あんた、それで頭は大丈夫なの?」
「まあね。すごい回復力でしょ!」
「サトシに似てね」
ミズカの調子に乗った姿に、カスミは呆れた表情で受け応えする。こうやって軽口を叩かないと、エーフィのことが心配で押し潰されそうなんだろうなとカスミは悟った。
だったら、これまでに聞けなかった話でもしてみようか。カスミはさっきの話から、ずいぶん聞かなかったことを聞いてみることにした。
「で。シゲルはどうなのよ?」
「へ? 元気だよ」
「そうじゃなくて……、好きなんでしょ?」
不意に聞かれて、ミズカは顔を真っ赤にした。ブンブンと首を横に振っているミズカに、ああ、やっぱりとカスミは思った。
つい最近、ハルカと連絡を取ったときに、ミズカの好きな人の話になったのだ。そのときの内容があまりにもシゲルの話だった。
きっと何も知らないハルカだから話せたのだろう。しかし、ミズカはカスミとも連絡をしっかり取り合っているとは思っていなかった。
「あんた……、わかりやすいわね」
「な……。別に良いでしょ! その話は」
「一時期、シゲルシゲルだったものねぇ? 嫌われてるかもとか、会いたいとか」
ますますミズカは顔を真っ赤にしていく。そして、目を逸らす。
「知ってたなら言ってくれれば良かったのに……」
「そのときは自覚なかったでしょうが。まさかシゲルがミズカに対してどう思ってるかわからないのに、自覚させられるほど無神経じゃないわよ」
カスミの思いを聞いて、ミズカは口角を上げる。自覚がなかったところまでわかっているとは思わなかった。敢えて言わないでくれたカスミの優しさに感謝する。