24章 攫われたエーフィ

エーフィが盗まれて一週間が経った。

偶々アニメを見ていた弟のタカナオから、サトシはシンオウ地方へ向かったと教えてもらった。それを合図に、ミズカは深夜ポケモン世界のオーキド研究所へ行った。

もう頭の痛みはない。傷は髪の毛で隠れたため、なんとか家族にはバレずに澄んだ。これならカサブタになっても隠れてくれそうだ。

玄関まで行くと、迎えてくれたのは、チコリータ、プラスル、マイナンだった。

「みんな! 迎えに来てくれたの?」

ミズカが聞くと、三匹は頷いた。そして、ドアを開け、客室まで案内してくれた。オーキドに頼まれたのだろう。

「こんにちは」
「おぉ、よく来たのう。シゲルからは聞いておるぞ。シゲルはもうシンオウ地方じゃ」

オーキドの口調は穏やかだが表情は真剣だった。その表情は、ミズカの知らない表情。知らないオーキドだった。緊張が走る。

「そこに座るといいじゃろう」
「はい」

ミズカはソファーに座る。ポケモン達は、そのままどこかへ行き、オーキドと二人になった。

「お前さん、昔に来ていたことを知っておったんじゃな」
「夢でしか、見てませんが……。そのうち、全部思い出すと思います」
「そうか、すまなかったのう」
「いえ……、父があんなんだから言ってなかったんですよね……。しょうがないです」
「お前さん、どうしてエーフィを盗んだのが、実の父だとわかったんじゃ?」

オーキドに聞かれ、ミズカは素直に答えた始めた。

「思い出したんです。あたしを殴った人物を……。それが、父に似ていたんです……」

シゲルの暗い表情を見た時、ミズカは口には出さなかったが自分を殴った相手の顔を思い出してしまった。

「では、実の父親が、昔のような父親でないことはわかっておるのじゃな?」

その質問に、ミズカは大きく頷いた。

「父親がお前さんと接触するためにエーフィだけを盗んだことも全てわかっておるのじゃな? お前さんは実の父を前に戦えるんじゃな?」

オーキドの質問がずしんと心に響く。だが、ミズカは怯まなかった。もう一度大きく頷いた。

「はい。エーフィに会えなくなるなんて、絶対に嫌なんで……!」

今は胸にぽっかり穴が空いた気分だった。それだけ、エーフィは自分の支えになっていた。余計に助けたい、会いたいという思いが強くなった。

オーキドはその強い意志をミズカの瞳から感じる。

「シンオウ地方じゃ。お前さんとは別の時空の歪みの反応がシンオウにあった」

オーキドの言葉にミズカは顔を上げ、目をパチクリさせた。やがて、なんのことかわかったらしい。あっと声を漏らした。

「出発は一週間後、またこの世界に来るといいじゃろう。準備があるのでな」
「はい」

ミズカは一度もとの世界を戻り、一週間待った。
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