3章 チコリータ、ゲットだぜ!

「どうしたんだ?」

サトシが聞く。

「チコリータが傷だらけになって気を失ってた」

不安そうな顔でミズカは説明した。

「誰かのポケモンかしら?」

カスミはこの辺にチコリータはいるのかと疑問に思う。その間にタケシがリュックを降ろしている。傷薬を持っているようだ。

「さあ……。でも、こんなに傷ついてるのに……、放って置くトレーナーっているのかな……」
「地図を見ても、ポケモンセンターまでは、明日にならないと着かないな。とにかく応急手当だ」

タケシは傷薬を出した。傷薬を目の当たりにして、ようやく安心する。

「お願い」

タケシにチコリータを託す。サトシ達は森の道を外れ、開けた広場のようなところへ出る。今日はここで野宿することになった。

タケシはすぐさま手当をしてくれた。慣れた手捌きを見つめる。タケシ達がいて助かった。自分ではどうすることもできなかった。

「タケシ。森の中で、もし傷薬がなかったら、どう手当てすればいいの?」

何も出来なかった。今回はタケシ達のおかげで何とかなっているが、もし次同じことになったら……。たとえば、今日みたいにポケモンをゲットしようとして、イーブイが傷ついてしまったら。

流石にミズカもイーブイの様子を見てモンスターボールに戻したが、予期せぬ出来事が起こるのは今回で身に沁みた。タケシは手当てを終わらせると立ち上がる。

見上げると、手招きされた。チコリータを気にすれば、「時間は掛けないから」と言われ、ミズカは立ち上がった。

「ミズカの世界にはポケモンがいないんだったな」
「うん。旅だってしている人は少ないよ?」
「そうか……」

タケシは顎を親指と人差し指で擦ると、まずは川に出る。流れが早い。どうやら勾配が大きくて、勢いが出ているようだ。

「川?」
「森に来たら、できれば川を探すといい。川を見つけたら、流れる方向に沿って歩く」
「沿って……」
「川を下った平地に人は集まる。水は生き物にとって必要不可欠だからな。それから川を見つけられれば、もしポケモンが怪我をしてしまったときは、消毒液がなくとも泥を洗い落とせる。化膿も防げるんだ」
「あぁ、そっか」

水が必要と言われて理解する。水はどこにでも湧いているわけではないのを、ミズカは初めて気がついた。
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