24章 攫われたエーフィ

「わかっていないようだね。その状態で行っても、勝ち目はない。ここにいるべきだ」
「そうだけど……。エーフィが……」

シゲルはため息をついた。幼なじみでライバルのサトシにそっくりだ。どうすれば説得できるかを考える。

「もし君の父が君と接触を持とうと言うなら、エーフィは無事のはずだ。むしろ、無闇に行けばミズカの方が危険だと僕は思う。だから、僕が、君の父の手がかりを探すよ。その間、ミズカはもとの世界に戻って傷を癒やしてくれ」
「でも……、シゲルに悪いよ……。それに連絡だって……」

ミズカは俯いた。シゲルの厚意は嬉しいが、シゲル自身はミズカのことを好いていないと思っている。だから、余計に頼りたくなかった。

シゲルはさっきの玄関でのやりとりから、ミズカが何を考えているのかわかった。ミズカの隣に座る。そして、口角を上げ、ミズカの背中を擦る。

「僕は平気だ。それより君の身体が心配だからね。連絡は……、そうだな。僕がサトシをシンオウ地方に呼ぶ。その時に研究所へ来てもらえるかい?」

なるべく優しく、ミズカが安心するように話す。

シンオウ地方は現在シゲルが研究者としている地方である。ミズカの世界では近日発売されるダイヤモンド・パールの舞台だ。

「……もうすぐサトシ帰ってくるよ? それじゃ、2日くらいしか経ってないんじゃない? 手がかりは見つかるの?」
「心当たりがある。エーフィを助けよう」

そのシゲルの言葉に、ミズカはとうとう折れた。

「わかった……。ごめん……。よろしくお願いします」

ミズカが言うと、シゲルはホッとした表情をして頷いた。まずはミズカをもとの世界へ帰したほうがいい。ポケモン世界での接触を考えているなら、もとの世界のほうが安全のはずだ。

ミズカは手鏡を取り出し、ドアを出す。

「あ、それからサトシには内緒にしてて」

サトシに心配や邪魔をさせたくなかった。

「わかった」

とりあえず安心させるためにシゲルは頷く。ただ、ここからはオーキドにも話さねばならないことだった。オーキドに話したら、きっとサトシに内緒というわけにはいかないだろう。

ミズカは知らないが、これはミズカだけの話ではない。何も知らないミズカは、ドアの向こうへと歩いて行った。
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