24章 攫われたエーフィ

視界が涙で霞んでくる。ふいに思い出したのは、エーフィと出会った時のこと。目がくりくりとしていて、輝かせていたイーブイのときや、ロケット団から助けようとエーフィに進化したときのこと。バトルだって沢山した。

全部全部楽しかった思い出だ。

「あたしが……助けなきゃ……」

ミズカは、よろめきながらも再び立ち上がった。頭がガンガンする。おかしく思い、後頭部を触る。少しヌメッとした。血である。実は、ただ素手で殴られたわけではない。木の棒で殴られたのだ。

だったら、連れて行かれたエーフィはもっと酷い思いをしているかもしれない。しかし、今はエーフィを追いかけるよりも先に助けを求めることだ。

「行かなきゃ……」

チルタリスを出す。チルタリスは驚いた表情でミズカを見つめるが、只事じゃないことを悟ると、すぐにミズカに背を向け、いつでも乗れる状態にした。

「ごめん……、みんな」

コンテスト会場の方を見た。ちゃんと挨拶をしたかった。しかし、そんな場合ではない。向こうに伝わらないのはわかっていたが、ボソリと謝る。

「チルタリス、……よろしく……」

ミズカはチルタリスの背中に乗った。チルタリスはミズカを落とさぬよう、慎重に彼女を運んだ。


オーキド研究所。オーキドやケンジが出掛けている間の留守を頼まれたシゲルは、ちょうど健康観察を終えたところだった。

チャイムが鳴り響く。こんな時間に客なんて珍しい。もう夕方になっている。首を傾げながら、玄関を開けると、そこには久しぶりの人物が立っていた。

「……ミズカ?」

髪が短くなった彼女は、頭に怪我をしているようだった。

「どうしたんだい!?」

驚きながらも聞くと、ミズカはふらつきながらシゲルを見た。

「誰かに殴られて……その……」

言葉が上手く出て来ない様子だ。彼女は立ってもいられないのか、シゲルの腕の中に倒れ込んできた。

「大丈夫かい!? ……ブラッキー、チコリータを呼んで、救急セットを持ってきてくれ」

一緒にいたブラッキーに頼むと頷いて奥へチコリータを呼びに行った。チルタリスが心配した表情でミズカを見ている。

「客室へ連れて行くよ。さ、僕の背中に」

シゲルがしゃがむ。しかし、ミズカは首を横に振った。


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