24章 攫われたエーフィ

「ねぇ、聞いて聞いて!」

唐突に来たミズカは嬉しそうに口を開いた。サトシ達は少し驚く。彼女とは、ついさっきに会ったばかりだ。

「あたし、部活で一番手になれたの!」

ミズカのVサインに、サトシ達は目を見開いた。しかし、次の瞬間、笑顔になる。

「本当か!?」
「うん」

聞いてくるサトシに頷いた。

「すごいよ」
「かもかも」
「よく頑張ったな」

マサトもハルカもタケシも、ミズカの頑張りには驚き、そして褒める。あの時、言った言葉を本当に実現させたのだ。さすがミズカだと言えた。

「ただ……。あたし、最近体調悪いから、また抜かれる。先生に言われた」

少し悔しそうに無理に笑った。自分の体力くらいわかっている。そのくらい最近のミズカは体調が悪かった。最近では、2ヶ月に一度は必ずお腹を痛め休む。休むくらいの痛みは2ヶ月に一度だが、休まないまでもお腹が痛いことはよくある。それがミズカには悔しくて堪らなかった。

ちなみに生徒会の件については、サトシ達にも言わなかった。あれからというもの、ミズカは体調が悪い時以外は、心を殺してテニスに打ち込んでいる。

「良いじゃないか。それで」

タケシの言葉に、ミズカは、えっ。と声を漏らした。

「ミズカは頑張ったと思うぞ。後は、ゆっくり自分のペースが一番だ」

隣でサトシ達も頷いた。ミズカは力が抜けた。そして、やっぱりポケモン世界に住めたらな、と思う。

「ありがとう。それじゃ、戻るね!」
「え、もう!?」

ミズカは何の迷いもなく頷いた。ポケモン世界に来てからわずか5分にも満たない。

「それじゃあね!」

そう言って、ミズカは帰って行った。残されたサトシ達は、彼女は体調が悪かっただからだろうと思い、再び次の町に向け歩き出した。

五ヶ月後、ミズカは二年生になったミズカは、病院にいた。

「自律神経失調症……?」

最近はしょっちゅう学校を休んでいた。お腹は痛いし、目眩も時々ある。動悸だってした。原因は自律神経失調症だったらしい。

自律神経失調症とは、緊張もしていないのに勝手に胸がドキドキしたり、席に立ち上がるとき、目眩や立ちくらみしたりするなどの症状がある。さらに、朝、起きれないなど、血圧が上がったり、下がったりすることの病気だ。

ミズカは病状が当てはまって薬をもらった。原因はストレスである。イジメから始まり、生徒会の件と、ずっと引きずっていた。朝は起きられず、朝練を参加しないで放課後練習だけに参加する始末。

そんなこともあり、前期は生活委員になることにした。ミズカの学校は二学期制で委員会は前期と後期の交代制だった。区切りは、十月の始めだ。そこまでに体調を治す気でいる。もし体調が戻ったら、後期で学級委員をやれればと思っていた。
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