24章 攫われたエーフィ
「先生がね……、お母さんが説得してくれだって。でも、おかしいって言い合ってみたけど、ダメだった」
母親もおかしいと思ったらしい。ミズカと顧問が話し終えた後、言い合っていた。母は戦ってくれていた。
「でね。一つ、条件をつけたの。委員会、学級委員ならやってもいいって! と言っても、二年になったらだけどね」
「ありがとう……」
大人の母親が言っても駄目だったのだから諦めようとミズカは思った。しかし、やりたいというのが本心。ミズカはずっと布団の中で悩んだ。
次の日、納得がいかないまま、担任のアマノに生徒会を諦めると話した。先生は驚いた表情で彼女を見る。すぐに察しがついたのか、アマノは顧問と職員室で大喧嘩したようだった。
そこにミズカはいなかったが、後からアマノに聞いた。味方がいて嬉しかった。だが、顧問はそうではなかった。昼休みに顧問は歯を磨きながらミズカを待ち伏せしていた。水道の鏡越しに睨まれ、おい、と声を掛けられる。
「お前が顔に出すから俺が怒られただろ!!」
口の中に入った歯磨き粉が飛んでくる。嘘をつけるわけもない。そもそも、一日で撤回なんて顔に出なくても、何が原因かは一目瞭然だ。
「いいか。試合に負けたらお前のせいだからな!」
また脅された。今度は電話ではない、真っ正面から言われた。ミズカは喉に詰まるものを飲み込む。胃がキリキリするのを堪えながら教室へ戻って行った。
「俺、お前に一票、入れてやるよ!」
その日の帰り。一人の男子がいい始めた。クラスメート達は、ミズカが生徒会を立候補すると思っている。
「そうそう。ミズカ、頑張って!」
友達にも言われ、ミズカは言葉が詰まる。しかし、ミズカは周りに迷惑をかけまいと、ケロッとした顔を浮かべた。
「え? あたし、立候補しないよ?」
わざと惚ける。周りは騒然となった。男子も目をパチクリさせる。
「は? だってやるって……」
「あはは……、あたしには無理かなぁって……」
苦笑を浮かべた。その言葉が嘘だとわかったのだろう、クラスはしーんと静まり返った。もともと頑固な性格のミズカ。彼女がそんなすぐに曲げてしまうとも思えない。ミズカの無理に笑った顔から、部活のことだとわかってしまったのだ。
「はい、じゃあ、号令!」
担任は慌てて、仕切る。
「気をつけ、れ~い」
「さようなら」
ミズカが、この教室から逃げるように去って行ったのは言うまでもない。結局、ミズカは生徒会を諦めた。
しかし、顧問のミズカへの仕打ちは酷いものだった。
「我が部活から立候補者が出た」
顧問が高らかに嬉しそうに声を上げた。ミズカはこの場にいるのが居た堪れなくなった。立候補者の先輩を見ると、誇らしそうにしている。
ミズカは許されなかったのに、先輩は許された。しかも、部内で盛り上げていくつもりらしかった。
胃が痛い。よりにもよって、先輩も書記の立候補だった。見ていられない。帰りたい。ミズカは心の中でずっとそう思っていた。
母親もおかしいと思ったらしい。ミズカと顧問が話し終えた後、言い合っていた。母は戦ってくれていた。
「でね。一つ、条件をつけたの。委員会、学級委員ならやってもいいって! と言っても、二年になったらだけどね」
「ありがとう……」
大人の母親が言っても駄目だったのだから諦めようとミズカは思った。しかし、やりたいというのが本心。ミズカはずっと布団の中で悩んだ。
次の日、納得がいかないまま、担任のアマノに生徒会を諦めると話した。先生は驚いた表情で彼女を見る。すぐに察しがついたのか、アマノは顧問と職員室で大喧嘩したようだった。
そこにミズカはいなかったが、後からアマノに聞いた。味方がいて嬉しかった。だが、顧問はそうではなかった。昼休みに顧問は歯を磨きながらミズカを待ち伏せしていた。水道の鏡越しに睨まれ、おい、と声を掛けられる。
「お前が顔に出すから俺が怒られただろ!!」
口の中に入った歯磨き粉が飛んでくる。嘘をつけるわけもない。そもそも、一日で撤回なんて顔に出なくても、何が原因かは一目瞭然だ。
「いいか。試合に負けたらお前のせいだからな!」
また脅された。今度は電話ではない、真っ正面から言われた。ミズカは喉に詰まるものを飲み込む。胃がキリキリするのを堪えながら教室へ戻って行った。
「俺、お前に一票、入れてやるよ!」
その日の帰り。一人の男子がいい始めた。クラスメート達は、ミズカが生徒会を立候補すると思っている。
「そうそう。ミズカ、頑張って!」
友達にも言われ、ミズカは言葉が詰まる。しかし、ミズカは周りに迷惑をかけまいと、ケロッとした顔を浮かべた。
「え? あたし、立候補しないよ?」
わざと惚ける。周りは騒然となった。男子も目をパチクリさせる。
「は? だってやるって……」
「あはは……、あたしには無理かなぁって……」
苦笑を浮かべた。その言葉が嘘だとわかったのだろう、クラスはしーんと静まり返った。もともと頑固な性格のミズカ。彼女がそんなすぐに曲げてしまうとも思えない。ミズカの無理に笑った顔から、部活のことだとわかってしまったのだ。
「はい、じゃあ、号令!」
担任は慌てて、仕切る。
「気をつけ、れ~い」
「さようなら」
ミズカが、この教室から逃げるように去って行ったのは言うまでもない。結局、ミズカは生徒会を諦めた。
しかし、顧問のミズカへの仕打ちは酷いものだった。
「我が部活から立候補者が出た」
顧問が高らかに嬉しそうに声を上げた。ミズカはこの場にいるのが居た堪れなくなった。立候補者の先輩を見ると、誇らしそうにしている。
ミズカは許されなかったのに、先輩は許された。しかも、部内で盛り上げていくつもりらしかった。
胃が痛い。よりにもよって、先輩も書記の立候補だった。見ていられない。帰りたい。ミズカは心の中でずっとそう思っていた。