24章 攫われたエーフィ
十月の下旬。ここはミズカの住んでいる世界。ここで問題が生じていた。
「お前は逃げてるんだよ」
「はい……」
ミズカは部活の顧問に怒られていた。逆らえない大人の話を歯を噛みしめて聞く。電話なため、顔を見られていないのが不幸中の幸いだ。何故、彼女が怒られているか。
ミズカの中学校では毎年11月に生徒会の役員決めがある。ミズカはその生徒会の書記をやろうと考えていた。好奇心で立候補しようと思ったのもあるが、字を書くのが好きだ。それに正義感の強いミズカだから、学校の悪いところを正せられればと考えた。
立候補したいという話に担任のアマノは大喜び。ミズカならと頷いてくれ、生徒会の書記の立候補を、と書類を渡してくれた。
しかし、思わぬ事態が起きた。部活の顧問が、話を聞き、ミズカの家に突然電話してきた。立候補を取りやめろという電話だった。
「いいか、もう一度考えろ! もしお前が生徒会に入って、試合に勝てなかったら、お前のせいだからな」
ただの脅し。試合に勝てなかったらお前のせい……。あまりにも酷い言いようだった。
「あいつらにも、まだ言ってないだろう? これから、ずっと一緒にやる仲間なんだ。言わないと嫌な気分になるだろ」
「……はい」
「な? わかるだろ」
正直ミズカにはさっぱりわからなかった。
一緒にやる仲間?
ミズカはモヤモヤとする。自分の気持ちを少しも汲み取ってくれないのに、他の部員の気持ちを考えろと言われ、ミズカは反吐が出そうだった。
何が仲間だ、馬鹿馬鹿しい。あんな上辺だけで、付き合っているような奴らは仲間なんかじゃない。顧問にハッキリそう言いたかった。いや、言おうと、少し口を開いたのだ。それは顧問の一言に遮られた。
「お前は、逃げてるんだよ!」
再度逃げているという顧問の言葉で、ミズカは言い返すのをやめた。なぜなら、その逃げているの対象がわかったから。自分は逃げているつもりはない。だが、顧問が逃げているというのなら、その対象は誰だかを考えた。
……同級生達だ。顧問はミズカが無視されていたことを知っていたということだ。それをこの一言から悟ったミズカは、顧問に何を言っても無駄だと思った。話が終わるとミズカは自分の部屋へ駆け込んだ。ベッドに潜る。
「何が、仲間だ……。何が逃げただ……。全部、知ってたんじゃん……。みんな……あたし、間違ってるかな……」
歯を食い縛る。悔しくて悔しくて涙が溢れてきた。
「あたしの気持ちは……、無視なの……? 試合に勝てば……、それでいいの?」
溢れる涙と共に溢れる気持ち。試合に勝てばそれでいいわけがない。ミズカはよく知っている。試合のことも気持ちのことも、全てポケモン世界で感じて学んだ。
ガチャリと部屋のドアを開ける音がした。ミズカは布団で涙を拭き、もそっと起き上がった。部屋に入ってきたのは母だ。
「お前は逃げてるんだよ」
「はい……」
ミズカは部活の顧問に怒られていた。逆らえない大人の話を歯を噛みしめて聞く。電話なため、顔を見られていないのが不幸中の幸いだ。何故、彼女が怒られているか。
ミズカの中学校では毎年11月に生徒会の役員決めがある。ミズカはその生徒会の書記をやろうと考えていた。好奇心で立候補しようと思ったのもあるが、字を書くのが好きだ。それに正義感の強いミズカだから、学校の悪いところを正せられればと考えた。
立候補したいという話に担任のアマノは大喜び。ミズカならと頷いてくれ、生徒会の書記の立候補を、と書類を渡してくれた。
しかし、思わぬ事態が起きた。部活の顧問が、話を聞き、ミズカの家に突然電話してきた。立候補を取りやめろという電話だった。
「いいか、もう一度考えろ! もしお前が生徒会に入って、試合に勝てなかったら、お前のせいだからな」
ただの脅し。試合に勝てなかったらお前のせい……。あまりにも酷い言いようだった。
「あいつらにも、まだ言ってないだろう? これから、ずっと一緒にやる仲間なんだ。言わないと嫌な気分になるだろ」
「……はい」
「な? わかるだろ」
正直ミズカにはさっぱりわからなかった。
一緒にやる仲間?
ミズカはモヤモヤとする。自分の気持ちを少しも汲み取ってくれないのに、他の部員の気持ちを考えろと言われ、ミズカは反吐が出そうだった。
何が仲間だ、馬鹿馬鹿しい。あんな上辺だけで、付き合っているような奴らは仲間なんかじゃない。顧問にハッキリそう言いたかった。いや、言おうと、少し口を開いたのだ。それは顧問の一言に遮られた。
「お前は、逃げてるんだよ!」
再度逃げているという顧問の言葉で、ミズカは言い返すのをやめた。なぜなら、その逃げているの対象がわかったから。自分は逃げているつもりはない。だが、顧問が逃げているというのなら、その対象は誰だかを考えた。
……同級生達だ。顧問はミズカが無視されていたことを知っていたということだ。それをこの一言から悟ったミズカは、顧問に何を言っても無駄だと思った。話が終わるとミズカは自分の部屋へ駆け込んだ。ベッドに潜る。
「何が、仲間だ……。何が逃げただ……。全部、知ってたんじゃん……。みんな……あたし、間違ってるかな……」
歯を食い縛る。悔しくて悔しくて涙が溢れてきた。
「あたしの気持ちは……、無視なの……? 試合に勝てば……、それでいいの?」
溢れる涙と共に溢れる気持ち。試合に勝てばそれでいいわけがない。ミズカはよく知っている。試合のことも気持ちのことも、全てポケモン世界で感じて学んだ。
ガチャリと部屋のドアを開ける音がした。ミズカは布団で涙を拭き、もそっと起き上がった。部屋に入ってきたのは母だ。