23章 スイクン伝説

「開いちゃったよ……」
「ミズカなんでわかったの?」
「ありえないかも……」

一発でパスワードを当ててしまったミズカに、サトシ、マサト、ハルカは開いた口が塞がらない。どうやら、テレパシーはミズカにしか聞こえないらしい。

「エーフィ、もういいよ。戻って!」

ミズカはエーフィを戻す。ちょうど遠くからパトカーのサイレンが聴こえてきた。

「ブソン、引き上げます」
「わかってる」

その音を聴いてまずいと思ったのだろう。ブソンは隙をついてミズカから乱暴にリモコンを奪い返し、ヘリコプターに乗り込んだ。後から、バショウも乗る。ミズカはポケモンを出してくいとめようとするが、自分のポケモンが皆、戦闘不能状態なことを思い出し、とめることは出来なかった。

ちょうどパトカーが止まった。

「あ、スイクンは!?」
「もう大丈夫だ」

ミズカの質問にタケシはニコッと笑い答えた。そして、そのまま、警察のところへ行き、彼は事情を話し始めた。

遠くからタケシとジュンサーのやりとりが聞こえる。最近、ブソンとバショウの動きが怪しく、探っていたらしかった。道理で誰も通報していないのに警察がタイミングよく来たはずだ。

スイクンはゆっくりと立ち上がった。

『……すまない』
「ううん、謝らないで。悪いのはアイツらなんだから」

スイクンに言われてミズカは首を横に振る。サトシ達からすれば、ミズカが独り言を始めたように見える。目が点になった。

それにさっきのパスワードの件も不思議だ。

「あの~……、ミズカ?」

ハルカが話しかける。

「ん? なに?」
「なんで、独り言を話たり…、パスワードがわかったりしているの?」
「え? スイクンが全部テレパシーで……って、ハルカ達は聞こえないの!?」

てっきり聞こるものだと思っていたらしい。ハルカが質問したはずが、逆に質問されてしまう。

「聞こえないぜ?」
「え……。皆聞こえてると思ってた」
「もしかして北風使いの生まれ変わりのミズカしか聞こえないんじゃない?」
『いや、そういうわけではない』

マサトの言葉にスイクンはそう言った。今度は全員に聞こえた。

「聞こえたかも!」

ハルカは感動したのか、はしゃぐ。そんな姉を見てマサトは隣でため息をついた。

『先程は体力が尽きていたために、ミズカにだけ聞こえるようにした。それに、テレパシーで話せると敵に知られても厄介だ』

スイクンの言葉にミズカ達は納得した。

「ねぇ、スイクン! ミズカが北風使いの生まれ変わりって本当なの?」

マサトはスイクンに迫る。どうしても聞きたいらしい。スイクンは頷いた。

『あぁ。彼女は北風使いの生まれ変わりで間違いない』

スイクンはミズカを見つめた。ミズカは首を傾げる。

『お前が知りたいと思っていることだが……』
「……え?」
『そろそろ、その話をしようと会うつもりだった』

ミズカは目を見開く。確かに、さっきずっとスイクンがそばにいてくれたような話をしていた。ミズカがこの世界に来た理由や、父親がポケモン世界と関わりがある理由を探っていることを知っていてもおかしくはない。
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