23章 スイクン伝説

「だけど、だからってなんで、スイクンがここを通るってわかったの? あたし、たまにしか、この世界に来ないのに……」

ミズカはエーフィをチラッと見ながら聞いた。ポケットからリモコンが完全に出るまで後、もう少しだ。

「それは我々がずっと時空の歪みを分析していたからです。一時期は点々としていましたが、今はある程度決められた方向に向かって時空の歪みが移動している……。予測くらい容易いです」

ブソンのポケットからリモコンは出た。後はバレないように此方に運ぶだけだ。

「少々遊び過ぎましたか。ブソン、ヘリを此方へ」
「わかった……、って、ねぇじゃねぇか!」

ブソンはポケットに手を突っ込むがもうリモコンはなかった。まだこちらの手にリモコンがない。

「エーフィ、リモコンをこっちに吹っ飛ばして!」
「フィ!」

ミズカが引きつりながら指示を出すと、エーフィはリモコンをミズカへ勢いよく飛ばす。いくらなんでも勢い良すぎた。矢を放ったようにリモコンはミズカを目掛けてきた。しかし、ミズカは落とすことなくあっさりとキャッチする。

「すごっ……」
「かもかも……」
「えへへ。あたしドッジボールとか、キャッチ得意なの!」

驚くサトシとハルカにミズカは照れたように言う。

「くそガキが……!」
「エーフィ、金縛り! もうちょっと頑張って!」

エーフィはブソンとバショウに金縛りをして、動けなくさせた。ミズカはリモコンを見た。数字を書いたボタンが0から9まである。

「うわ……。パスワード入れるようになってる……」
「どうするんだ……? わからなきゃどうにもならんぞ」

タケシの言葉にミズカは苦笑した。まさかパスワード式になってるとは思っていなかった。エーフィを見ると、身体が震えている。リモコンを取るときにおそらく相当集中してくれていた。そこに金縛りもとなると限界だろう。残された時間は短い。

とはいえ、パスワードがわからなければ、下手に触れない。ミズカがリモコンを前に硬直していると、声が聞こえてきた。

『パス……は……だ』
「なんか言った?」

サトシ達が何か言ったのかと思い、ミズカは聞く。しかし、サトシ達は首を横に振る。

――こんな時に……空耳?

ミズカは少し不気味さを覚えながらもリモコンを見つめる。

『ミズカ』

今度はハッキリ聞こえた。仲間の声ではない。だとしたら……。ミズカはスイクンを見る。こちらを見て微かに頷いた。

『やっとわかったようだな……。パスワードは……93187だ……』

テレパシーだと理解した。スイクンは、パスワードを知っていたらしい。ミズカは素早く『93187』と押した。徐々に檻はバラバラに崩れた。よろめきながらもスイクンは脱出した。タケシは素早く治療を始めた。

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