23章 スイクン伝説
「う~ん、久しぶり~」
ミズカは背伸びをした。地獄の夏休みが終わり、ミズカはポケモン世界に来た。引っ越しも終わり、自分の部屋が出来たミズカは少し前みたいに時間を見計らう必要はなくなった。
部屋に親が来ることはほとんどない。こうしてまた、夜に来られるようになった。
部活では、先輩からの助けがあった1件から、少しずつ同級生との関わりが変化してきていた。しかし、ミズカは戸惑いを隠せないでいる。
手紙の返事は結局していない。
『ミズカは、あたし達と仲良くなりたいの?』
『ミズカの気持ちが知りたいな』
そんな手紙の返事なんて書きたくなかった。仲良くしたいなんて思っていない。そもそも仲良くなりたいと聞かれて、頷いたとして、対等な関係になるわけがなかった。
それが、返事もしていないのに、急に話しかけられるようになった。先生や親にチクられたくないから、向こうはミズカと仲良くならなきゃと必死の様子が透けて見えた。だから、ミズカも話はするものの、そこまで一緒にいようとは思わない。
――そういえば、サトシ……、何かわかったかな……。
ふと、この間の記憶が蘇る。あの夢のことである。オーキドに夢のことを聞いてくれただろうか。聞いていたとして、オーキドが教えてくれたかは甚だ疑問だ。
とりあえず、会えば何かわかるだろうと、一歩進んだ。が、不意に声が聞こえてきて立ち止まった。
「……本当に、……ンが来ん……」
微かに遠くから声が聞こえる。気になって、そちらを優先させることにした。ただならぬ空気を感じたミズカは少しずつ音を立てないように近づいた。地面に落ちた細かい枝を踏まぬように忍び足で歩く。
すぐそこまで来ると木の後ろに隠れ、様子を見た。相手にバレないように、木から少し顔を出す。その先にいた人物にミズカは思わず目を見開いた。急いで身体を木に隠す。
――あれ……、ブソンとバショウじゃん。
そうロケット団幹部、ブソンとバショウがそこにいたのだ。
――何してるんだろう……?
「……気配がしますね」
顔を出そうかと思ったところで、バショウが口を開いた。ミズカは手で口を塞ぎ、息を殺した。額から汗が出てくるのを感じる。心臓は爆発しそう。一気に身体が緊張する。
「あ? なんかいたか?」
「いいえ……。まあ、いいでしょう」
ブソンに聞かれ、バショウは辺りを見回すが結局見つからなかったらしく、探すのをやめた。ミズカはホッと息を撫で下ろした。しかし、こうなっては下手に動けなくなった。
「そろそろだな」
「ブソン、チャンスは一回のみです。あなたに任せますよ」
「任せとけ」
ブソンは何やら機械のリモコンを出す。また悪事を働こうとしている。何をするかはわからないが、外れてはいないだろう。
「バショウ、スイクンが来るまで後どれくらいだ」
スイクンという言葉を聞いて動揺した。小さい枝を踏んでしまい、バキッと音が響く。
ブソンとバショウの視線がこちらに向くのがわかった。ミズカの背中は簾のように汗が流れていく。
ミズカは背伸びをした。地獄の夏休みが終わり、ミズカはポケモン世界に来た。引っ越しも終わり、自分の部屋が出来たミズカは少し前みたいに時間を見計らう必要はなくなった。
部屋に親が来ることはほとんどない。こうしてまた、夜に来られるようになった。
部活では、先輩からの助けがあった1件から、少しずつ同級生との関わりが変化してきていた。しかし、ミズカは戸惑いを隠せないでいる。
手紙の返事は結局していない。
『ミズカは、あたし達と仲良くなりたいの?』
『ミズカの気持ちが知りたいな』
そんな手紙の返事なんて書きたくなかった。仲良くしたいなんて思っていない。そもそも仲良くなりたいと聞かれて、頷いたとして、対等な関係になるわけがなかった。
それが、返事もしていないのに、急に話しかけられるようになった。先生や親にチクられたくないから、向こうはミズカと仲良くならなきゃと必死の様子が透けて見えた。だから、ミズカも話はするものの、そこまで一緒にいようとは思わない。
――そういえば、サトシ……、何かわかったかな……。
ふと、この間の記憶が蘇る。あの夢のことである。オーキドに夢のことを聞いてくれただろうか。聞いていたとして、オーキドが教えてくれたかは甚だ疑問だ。
とりあえず、会えば何かわかるだろうと、一歩進んだ。が、不意に声が聞こえてきて立ち止まった。
「……本当に、……ンが来ん……」
微かに遠くから声が聞こえる。気になって、そちらを優先させることにした。ただならぬ空気を感じたミズカは少しずつ音を立てないように近づいた。地面に落ちた細かい枝を踏まぬように忍び足で歩く。
すぐそこまで来ると木の後ろに隠れ、様子を見た。相手にバレないように、木から少し顔を出す。その先にいた人物にミズカは思わず目を見開いた。急いで身体を木に隠す。
――あれ……、ブソンとバショウじゃん。
そうロケット団幹部、ブソンとバショウがそこにいたのだ。
――何してるんだろう……?
「……気配がしますね」
顔を出そうかと思ったところで、バショウが口を開いた。ミズカは手で口を塞ぎ、息を殺した。額から汗が出てくるのを感じる。心臓は爆発しそう。一気に身体が緊張する。
「あ? なんかいたか?」
「いいえ……。まあ、いいでしょう」
ブソンに聞かれ、バショウは辺りを見回すが結局見つからなかったらしく、探すのをやめた。ミズカはホッと息を撫で下ろした。しかし、こうなっては下手に動けなくなった。
「そろそろだな」
「ブソン、チャンスは一回のみです。あなたに任せますよ」
「任せとけ」
ブソンは何やら機械のリモコンを出す。また悪事を働こうとしている。何をするかはわからないが、外れてはいないだろう。
「バショウ、スイクンが来るまで後どれくらいだ」
スイクンという言葉を聞いて動揺した。小さい枝を踏んでしまい、バキッと音が響く。
ブソンとバショウの視線がこちらに向くのがわかった。ミズカの背中は簾のように汗が流れていく。