22章 キルリア、怖がり克服中の混乱!

カシャッというカメラの音と共にミズカは目を開けた。大きな木の下。すぐに隣には、サトシとシゲルがいる。

もう二度見ている夢だが、一つ違うことがある。前に見た夢の続きだということだ。前は写真を撮って起きていたが、今回は写真を撮ったところからが起点らしい。

「そろそろ研究所に戻ろう」

写真を撮ったミズカの前の父は歩き出す。ミズカ達はそれについて行った。研究所に戻る途中、妙に冷たい空気が流れていた。父と歩くシゲルの背中。何を思っているのだろうかとミズカは首を傾げる。そして、自分の隣にいるサトシの顔を覗いた。少し思い詰めたような、暗い表情だった。

「お兄ちゃん……?」

ミズカの声にサトシはハッとした。

「どうしたんだ?」
「ううん、なんでもないよ……」

聞くのが怖くなった。聞いてしまったら全てを知ってしまいそうだった。サトシが自分をどう思っているのか。何を考えながら自分と遊んでいたのか。聞いてしまったら、全てを知ってしまいそう。

サトシとの会話はそれきりなかった。沈黙が続き、研究所へと戻る。

「もういいんじゃな」

オーキドは研究所の玄関にいた。父親は頷くと、モンスターボールを出した。

――うそ……。なんで、お父さんが……ポケモンを……?

ミズカは驚いた。鼓動が大きく揺れる。目の前には黄色いポケモン、コダックがいた。カスミのコダックより攻撃的な表情をしている。

「……ダック、さ……で、サトシ……、……消せ」

父親の言葉が途切れ途切れに聞こえてくる。消せと聞こえた途端、バタンと音がした。誰かが倒れた音だ。幼いミズカは怖くなっていたのか、涙で目が霞んでいた。

よく見えていないが、音を頼りに倒れた人物は探る。倒れたのは、サトシだった。

「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」

起きる気配がない。ミズカの心臓はドクドクと脈打っている。すごく怖くなった。

「次はミズカだ」

ハッキリと聞こえた。自分の目の前で何が起きているのだろう。だんだん、霞んだ目から暗闇に変わっていった。

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