22章 キルリア、怖がり克服中の混乱!

「じゃあ、なんで……」
「俺も同じ夢を見たんだ。ミズカって子と、シゲルと三人で遊んだ夢を見た」

サトシも何度か見た夢を思い出していた。
最初はミズカという名前も顔も分からなかったが、何度か見ているうちにミズカだとわかるようになった。だが、サトシからすれば変な夢の一つで、夢に仲間が出てもおかしくないと思っていた。

それに、あの夢は遊んでたという言葉だけなら聞こえはいいが、あまり良い夢には思えない。それは何故なのかはサトシ自身もわからないが。

ともあれ、これだけの偶然が重なるのなら、おそらくこれは真実だ。二人に記憶がなくとも、実際にあった出来事に違いない

つまり、シゲルの言っていた女の子はミズカ本人と言うことになる。何故、シゲルはあのときに隠したのだろう。わからないものが余計わからなくなった。

それにシゲルはあのとき、

『君の名前を聞いて思わず昔を思い出していたんだ。君に顔をしかめたわけじゃない』

と言っていた。君に顔をしかめたわけじゃない。裏を返せば、そのときの女の子には顔をしかめていることになる。ミズカは胸がギュッと掴まれた感覚になる。

やっぱりシゲルは……、自分をあまり良く思っていないではないか。しかし、今はそんなことを考えている場合じゃない。自分のシゲルに対する気持ちは後だ。そもそも、最後に会ってからだいぶ経っている。今更、この気持ちをどうしようとは思っていない。

ミズカはぎゅっと心の奥底に気持ちをしまい込んだ。

「でもなんか、話……矛盾してないか?」
「だよね……。シゲルの話からすると、あたし達は昔会ってるってことになるけど……」

ミズカは頷いた。二人には記憶がない。二人は顔を見合わせ、ため息をつく。これだけ二人が考えようとしているのは、あの夢がただの雰囲気ではなかったから。

「辻妻は合うよね?」
「え?」
「だって、あたしが最初にポケモン世界に来たとき、オーキド博士が、あたしのこと呼んだとか言うし……。元はと言えばあたしはこの世界の人間じゃないわけだから、知らないはずでしょ? でもあたしがそれ以前にこの世界に来ていれば、オーキド博士が知っていてもおかしくない」
「でも、シゲルの発言が矛盾してるぜ。俺はミズカって子と遊んだ覚えがない。二年前のことぐらい覚えているはずなんだよ」

ミズカは考え始めた。たしかにミズカは物心ついたかつかないかの時期で覚えているかは微妙だ。サトシは8歳。あんな雰囲気で夢にまで出てくる出来事を覚えていないわけがない。沈黙が続き、口を開いたのはミズカだった。

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