最初はビクビクしていたものの、ピカチュウと一緒に歩いていて安心してきたのか、だんだん慣れてきた。そんなキルリアの姿を見て、ミズカは自然と笑みが込み上げる。ピカチュウが面倒見のいい性格でありがたい。

そんな風に微笑ましくいたのだが、ミズカは物の影から誰かに見られていることに気がついた。その影を確認して、ミズカの表情は急変した。驚いた表情で、立ち止まる。

「どうしたんだ？　ミズ――」
「ちょっと、待ってて！」

サトシがミズカの様子に気づく。ミズカはサトシの言葉を遮った。もう姿が見えない。だが近くにいるはずだ。呆気にとられているサトシ達を置いて、ミズカはあっという間に走っていった。

――なんで？　なんで……！？

ミズカは身体が熱くなっていくのを感じる。彼女は確かに影の人物を捉えた。

「……お父さん」

もう二、三年会っていない、血の繋がった父親だった。

「なんで……。なんで……あの人が……」

その場に座り込む。もう二、三年、見ていない顔が頭に浮かんできた。ありえない。ポケモン世界に父親がありえないはずだが、見間違えるはずがない。あれは確かに別れた父だった。

「ミズカ……？　どうしたんだよ。急に走りだしたりして……」

手分けして探していたのだろうか。サトシが呆然と座り込むミズカの肩を叩いた。やっとミズカの目にサトシが映る。

刹那、一、二年前の記憶が蘇る。本当に父がここにいることはありえないことなのだろうか。そう思うのは、昔、二度も見た夢があったからだ。

男の子二人……サトシ、シゲルと幼い自分が遊んだ夢。

『実は僕が八歳の時、君と同じ名前の３歳くらいの女の子と会ったことがあるんだ。そのときはサトシもいたよ』

シゲルがジョウトリーグで自分に言っていた話を思い出す。もし、自分の見た夢が、夢ではなく現実の話だったとしたら……。

「夢……」
「夢？」

サトシはさっぱりわからず、首を傾げた。座り込んでいるミズカの隣にサトシも座る。サトシは詳しく聞くことにした。

「そう……。あたし、前にね。幼い自分が、８歳くらいのサトシとシゲルと遊んでる夢を見たんだ。その夢、あたしの前のお父さんもいた。ずっとどうなんだろうって思ってたんだけど、今、そこに前のお父さんがいて……。それで思い出したの。ジョウトリーグの時、シゲルが８歳の時、あたしと同じ名前の女の子と遊んだことがあるって……。その女の子は３歳ぐらいで、サトシも一緒だったって……」
「それ……、本当か！？」

サトシは表情を変えた。逆にミズカが驚く。

「あたしと同じ名前の女の子と遊んだ覚えあるの！？」
「いや……、ない」

そう言われ、ミズカは転けた。