21章 バシャーモの森

「えっと、タケシ」
「どうした?」
「あたしが、助けたバシャーモ、足に怪我してるみたいなんだけど……」

ミズカは、助けたバシャーモを見た。足には、崖に落ちた時に出来たのだろうか、深い切り傷がある。

「わかった。今すぐ治そう」

タケシはそういうと、バシャーモに切り株に座らせた。リュックから薬を出すと、バシャーモの手当てを始める。

「おい、なんで、あのバシャーモが怪我してんのわかったんだよ。おめぇ、崖に落ちそうでそれどこじゃなかっただろ?」

傷の事に気づいたミズカに、シップウは聞く。ミズカは、エーフィとキルリアをボールに戻していた。

「ミズカだから、きっと見る余裕があったんだよ!」
「かもかも!」

ミズカが答える前に、マサトとハルカは勝手に答えた。

「いや、いくらなんでも、見る余裕はなかったよ。だって、怪我のせいで暴れだすんだもん」
「だから、その怪我のことを聞いてんだよ」
「怪我は、皆が檻に閉じ込められてるとき、足を痛そうにしてたから」
「そんな見てる余裕があったんか、てめぇ」
「ロケット団なんて、そんなものよ」
「つか、そんな余裕があんなら、さっさと鍵とスプレー取り返せよ」

たしかに、捕まってる身になれば、早く助けて欲しかった。シップウの言葉に苦笑する。

「おめぇ、人がどうなってもいいのかよ」
「そんなこと言ってないよ。ロケット団だから余裕あったの!」
「……ッぷ」

ロケット団もそう言われてはお終いである。シップウは納得なのか、吹き出した。

「ミズカ、バシャーモの手当て終わったぞ」
「え? うん!」

タケシに言われ、ミズカは彼の所へ行く。

「どう?」
「もう大丈夫だ。それにしても、ホントによくそんな余裕があったな」
「聞いてたの?」

ミズカは顔をしかめる。タケシは苦笑した。バシャーモも少し笑っている。

「バシャーモ、ありがとう。スプレーを取ってくれて」
「シャー」

バシャーモは首を横に振る。バシャーモからすれば、ミズカは恩人だ。お互いに微笑み合う。

「でも、良かったな。バシャーモが落ち着いて」

タケシの隣にいたサトシに言われミズカは頷いた。

「それじゃ、そろそろ行こうよ」

元気よく言うミズカ。もとの世界での手紙の件は少し吹っ切れたようだ。

「そうだな。ハルカ、マサト、そろそろ行こうぜ!」

サトシがリュックを背負う。ハルカとマサトも頷き、自分の荷物を持った。

「シップウ、色々とありがとう! 借金取りからの逃走、頑張ってね!」
「おう! 俺はそう簡単にゃ捕まらねぇよ」

こうして、シップウやバシャーモと別れ、ミズカ達は歩きだした。

と、何やら後ろから視線を感じる。

「ミズカ、後ろ」
「え?」

ミズカは気づいていなかったらしい。マサトに言われ振り向いた。そこには、さきほど、ミズカが助けたバシャーモがいる。

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