21章 バシャーモの森

「わかった。やってみる。みんなも手伝って!」

ミズカが言うと、サトシ達は頷いた。ミズカは自分のリュックから縄を取り出した。それだけでは足りそうにない。タケシが自分の持っている分を出して、固く結んでくれた。

「よし!」

その縄を自分に巻きつけ、ミズカは気合いをいれた。

「ミズカ、大丈夫なのか?」

サトシが聞く。足を怪我した前科があるミズカにやらせて大丈夫かと、サトシは少しだけ心配に思った。だったら、まだ自分がやった方がいいのではないかと。

というのも、作戦はかなりの危険が伴う。まずミズカがバシャーモのところへ降りる。自分の縄を解いてバシャーモに巻き付け、サトシ達にバシャーモを引っ張り上げてもらう。保険のためにエーフィとキルリアもエスパーでバシャーモを持ち上げる。

ミズカはチルタリスに乗って戻るつもりである。崖に慣れていないミズカで果たして大丈夫だろうか。それはサトシのみならず、他の仲間たちも思っていた。

「もちろん! あたしは不死身よ!」

そんなミズカは自分でやる気満々だった。
何を言っているんだかと、ハルカとマサトはため息をついた。

「んじゃ、行って来る!」

ミズカは、なんの躊躇いを見せることなく、崖をゆっくり降りはじめた。ミズカだけ緊張感がない。流石の運動神経とだけあって、ロープを巻き付けバランスを取りながら壁を蹴って器用に降りていく。

途中まで上手く行ったのだが、急にバシャーモが暴れ出した。この場にいる全員に緊張が走る。縄を燃やされたら、バシャーモどころかミズカも真っ逆さまだ。

「落ち着いて、バシャーモ! あたしは助けにきたの!」
「シャー!」

バシャーモはミズカを攻撃しようとする。攻撃されそうな彼女は上手く縄を利用し躱す。しかし、そのせいか、バシャーモは崖から落ちそうになる。

「エーフィ! キルリア!」

叫ぶとエーフィは金縛り、キルリアは念力でバシャーモの動きを止めた。そして数センチ、浮かせる。浮かせている隙に自分の縄を解くと、バシャーモの腰に巻く。バシャーモは暴れたそうだが、二匹の攻撃には抗えない様子だ。

ミズカは縄を固く結べたかどうかを確認して、顔を上げる。何か暴れてしまった理由はありそうだが、今はそれどころではない。

「出来たよ!」

彼女が言うと、サトシ達は一斉に縄を引き始めた。ミズカは静かにその場でバシャーモを見守る。バシャーモが助かったところを見送り、安心すると、チルタリスに跨って戻る。

「どう、バシャーモは暴れてな……って、何?」

ミズカの目の前には、何故か縄でグルグル巻きにされたサトシ達と、大きい檻の中に入ったバシャーモやエーフィ達の姿があった。

「なんだかんだと声がする」

ミズカはピクッと反応した。ロケット団が気球で降りてきた。

「地平線の彼方から」
「ビックバーンの彼方から」
「我らを呼んでる声がする」
「おまたせニャー!」
「けなげに咲いた悪の花」
「ハードでスイートな敵役」
「ムサシ!」
「コジロウ!」
「ニャースでニャース!」
「ロケット団のある所」
「世界は!」
「宇宙は!」
「君を待っている!」
「ソーナンス!」
「チリーン!」

彼らの登場台詞を聞かないつもりでいたが、台詞が変わっていたのに驚き、さらに好奇心も相まって、すべて聞いてしまった。
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