21章 バシャーモの森

「なんで、こんな所にバシャーモ達がいるのかはともかく……。先に逃げる方法を考えた方がいいよね?」
「どうするつもりだ? 逃げ場はないぞ」

ミズカに案があると思い、タケシが質問する。

「あたしが、キルリアとエーフィでバシャーモ達の気を引くよ。その隙に逃げて」
「でも、それじゃあ……」

マサトが心配した表情でミズカを見た。ミズカはそんな彼に微笑みかける。

「平気。もし崖に落ちても、チルタリスがいるから」

この話に納得いった。サトシ達は頷き、ミズカから少し離れ、逃げる体勢になった。

「エーフィ、キルリア! よろしく!」

ミズカは、モンスターボールから二体を出した。

「エーフィはサトシ達側のバシャーモ達に金縛り! キルリアは影分身で他のバシャーモ達の気を引くのよ!」

ミズカが指示を出すと、二匹は頷いて、それぞれ技を出す。

「皆、行って!」

彼女が言うと、サトシ達は金縛りで動けないバシャーモを横切り、走って行った。ミズカはバシャーモを傷つけるつもりはない。

「二人ともありがとう。戻って」

ミズカは二匹をボールの中に戻す。自分もそそくさと逃げるつもりだ。

「バシャ……」
「ん?」

さっき、ピカチュウの攻撃を受けたバシャーモとそれを庇ったバシャーモが前に出てきた。思わず軽く一歩下がる。ハッとして、後ろを見るとすぐ下は崖だ。もう一歩でも下がれば、真っ逆さまだった。

「バシャ、シャモシャモ!」

そんなミズカを他所に、バシャーモは強く話しかける。

「え……? なんて言ってるかわからない……」

ミズカは戸惑う。意味はわからない。が、必死な姿と、自分を攻撃しない様子を見て、助けを求めているのではないかと思った。

「助けて……、ほしいの?」
「シャモ!」

バシャーモは頷く。どうやら当たっていたらしい。

「でも、どうして? だったら、なんで攻撃してきたの?」
「てめぇらが恐かったんだよ」

答えたのは、バシャーモ達ではない。バシャーモの後ろから、14歳くらいの少年が出てきた。茶髪で肩まで髪の毛が伸びている。

「あたしが……、恐かった?」

ミズカは聞き返した。

「そ。他にもいただろ?」
「……この数に対したら5人しかなんじゃ……」
「馬鹿か、おめぇは。バシャーモにしたら、5人もなんだよ。俺ら人間を恨み、怖がってる奴らなんだから」

この少年の言葉にミズカは顔をしかめた。どういうことかと考える。人間を恨んでいる……。ということは、チコリータやチルタリスと同じ状況だったのだろうか。

そして、ここはカントー地方。元来、バシャーモが生息しているはずがない。だったら、考えられることは絞られる。そこまで考えて、ミズカはパチンと手を叩いた。

「そっか、カントーにバシャーモの群がいる理由はそこから……。でも、そんな偶然続きなことがあるの?」
「あるんだよ。ここらじゃ有名な話だ。おめぇ意外に物わかりがはぇな……」

もともと、バシャーモは人間とともに生活していた。。しかし、捨てられてしまった。そこへ偶然、他のトレーナーに捨てられた別のバシャーモに会ったのだ。二匹は捨てられた悲しみを心にしまい、人間は悪い奴らと考え始めた。

そして、この森を歩いてきた人間を見ては、恐れて攻撃をするようになった。二匹のバシャーモは、いつしか子孫を残し、繁殖したというわけだ。
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