21章 バシャーモの森

「あ~、いいね~! ポケモン世界……!」

ミズカは大きく深呼吸をした。とても、気持ちがいい。もとの世界のことを忘れられそうな勢いだ。

「ミズカ……、ところで……」

隣では、ハルカが心配した表情で彼女を見つめた。サトシ、マサト、タケシも心配した表情で見ている。

「あぁ、もとの世界?」

察したミズカはハルカに聞いた。ハルカはゆっくりと頷いた。ミズカが部活内の虐めのことを仲間達に相談してから、もとの世界では、一ヶ月半ほど経っている。

「なんかね……。手紙もらった」

顔をしかめながら、ミズカは青空を見た。

「手紙?」

マサトが聞く。

「うん。なんか、その手紙に『ミズカは、あたし達と仲良くなりたいの?』だって」

手紙の内容に、サトシ達は呆れた表情を見せる。自分達が散々無視しておいて、最終的にはこの手紙。呆れたものだ。

「何故、そんな手紙を書いてきたのか原因はあるのか?」

タケシは、ミズカに聞く。彼女はわかってるらしく頷いた。

「手紙を渡された日、先輩に助けられたの」
「助けられた?」

サトシが聞き返した。部活内と聞いたからか、先輩とも仲良くないと思っていたのだ。

「お弁当一人で食べてるあたしに、一緒に食べようって言ってくれたの! その時は、泣きそうに嬉しかった。だけど……」
「それを見た同級生が手紙を書いてきたってわけか……」

タケシが言うと、ミズカは二、三度頷いた。

つまり、先輩がミズカを助けたのを見た同級生たちは、先輩が顧問にチクるのではないかと思ったのだ。だから、手紙を書いた。まるで、ミズカが仲良くなることを拒んでるみたいに。

「……で、あたしは『迷惑なら別にいい』って返事を書いた。
で、返ってきたのが『あたし達はミズカの気持ちが知りたいな』だって。馬鹿にされてんのかなって思ったし、チクられるのが怖いから手紙寄越したくせに何を今更と思って、その後は返事は書いてない」

そんな少しの抵抗を見て、サトシ達はいつものミズカだと思った。そこで仲良くしたいと言わない。ちゃんと立ち向かっている。

ミズカは、一連の出来事を思い出すと、ムッとした表情でサトシ達の一歩先を進む。

「ミズカ……。この調子だと、同級生に怒りをぶつけそうかも」

ハルカが小声で言った。そもそも怒りをぶつけないのも不思議だ。そう思っていると、メガネをクイッとかけ直しながら、マサトが腕を組む。

「怒ったら、なおさら無視されるに決まってるじゃん。ミズカは怒らないと思うよ」
「親とか先生に言えれば良いんだけどな」

サトシはムッとしているミズカの背中を見つめた。
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