20章 中学の試練

「で……? ミズカはどうするんだ?」
「どうするって?」

サトシが聞くと、ミズカは首を傾げた。

「部活だよ……。辞めるのか?」

サトシはこれが聞きたかったらしい。そんなに辛いなら、辞めることも考えているのだろうかと思った。

サトシ自身のことだったら、きっと答えはノーだ。自分に置き換えても、自分だったらやりたいことを貫く。もしこの世界の仲間だったら、サトシは嫌だと言われても虐めた側に物申しに行く。やりたいことを楽しくできるように。

だが、ミズカは住む世界が違う。サトシ達が助けに行けるわけではない。だからか、辞めるという考えが浮かんだのだ。

ミズカはサトシの質問が意外だった。散々自分が考えていたことだったのに、サトシ達に求めていたことが辞める勇気ではなかったことに気がつく。

では、何を求めていたのか。ミズカは湖を見つめた。

「辞めたいよ……」

しかし、求めていた答えは違うところにある。

さっきのマサトの考えは、きっと皆の答えだ。悪くない。向こうが悪い。しかし、ミズカも立ち向かわないのか。

少し諦めていたことを言われて、夢が覚める思いだ。

「でもさ、あたしが好きなのはテニスなの。好きな物を他の人になんて盗られたくない……!」

やっと気づいた。自分は辞める勇気が欲しかったのではない。

「だから……、今決めた!」

ミズカは立ち上がって、湖に吠えるように叫んだ。

「あんな奴らに盗られて堪るか! あたしは、同級生の中で一番になる!」

ミズカは立ち向かう覚悟が欲しかったのだ。

ハルカ達は、ミズカの変わりように開いた口が塞がらない。しかし、ミズカの表情はいつものミズカとまではいかないが、明るくなっていた。

「ふぅ」

なんだか知れないが、ミズカは急に体の力が抜けるのを感じた。そして、そこから、大の字になって寝転がる。表情も態度も忙しい。

「皆、ありがとう……。おかげでなんかスッキリした」
「それは良かったかも!」
「なんか辛い事があったら、俺達いつでも、相談に乗るぜ!」

ミズカが元気になり、ハルカ達はホッとする。やはり、仲間の元気で明るい姿を見るのが一番だと思った。そして、ミズカのこの部活を辞めない決意……心配だか、見守る事にした。

「本当にありがとう」

しかし、この決断が後に自分を苦しめる事に繋がるとは、ミズカは夢にも思わなかった。部活を辞めないと決意した時点から、ミズカにゆっくり……、ジワジワと近付き、苦しめていくのだった。立ち向かった先に待っているものをミズカはまだ知るはずもない。

「そうそう」

ハルカは何かを思い出し、ミズカに話かける。ミズカは起き上がると、ハルカを見た。
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