20章 中学の試練

「知らない……。あたしが悪いのかもね。よく虐められる方が悪いって言うし……」

湖に映ってる自分の顔や皆の顔を見ながらミズカは言った。
いつもは、悪い事は悪いと言い切るのだが、今回は弱気になり言い切れなかったらしい。

「なぜ、そう思うんだ?」

タケシはなぜハッキリ悪いことだとミズカが言えないのかと深掘りする。ミズカは顔をしかめながらも、無視されるまでの経緯を話した。

その前に虐められていた子がいたこと。その子を助けていたこと。その子が自分に黙って辞めてしまったこと。だから、助けていたことがもしかしたら、本人にとって迷惑だったかもしれないこと。だとしたら、今回の件はその報いなのではないかと思っていること。

ミズカ自身に何も救いのなかった行動だった。虐めていた側は、確かに面白くなかっただろうし、そんな自分と仲良くなろうとは思わないだろう。

だから、ハッキリ言ったところで修復なんて叶わないだろうし、ハッキリ言ってもっと酷くなる可能性がある。だったら、辛くて仕方がないが、今のままのほうが良い。

親には、絶対に言えない。折角落ち着いて、順調なのに、自分のせいで心配をさせたくない。

元来説明が苦手なミズカは、詰まりながらも、サトシ達になんとか話した。ミズカの胸の内を聞いて、サトシ達は胸が苦しくなった。

「……だから、上手く立ち回れなかったあたしが悪いんだよ。もっとやれることあったと思う」

ミズカは下唇を噛み締めた。

サトシ達が思っていることは、ミズカは悪くないということ。悪いわけがない。そもそも、虐めた側がすべて悪い。一人にさせたり、無視したり、もし互いに相容れなくても、そんなことは、わざわざしなくて良いはずだ。

どう伝えようか迷っていると、マサトが立ち上がった。そして、ミズカの前に泣きそうな顔で立つ。

「そんなわけないじゃん! そんなのいつものミズカらしくないよ! 正義感が強いミズカはどこ行ったのさ!」

弱気なミズカが気に食わなかった。間違いは間違いだとハッキリ言えるミズカがマサトは好きだ。ポケモンのために立ち向かっているミズカの姿は今はない。

マサトはそれが堪らなく悔しかった。

ミズカは呆気にとられ、ポカンと叫んだマサトを見る。自分のために自分を叱咤激励してくれるマサト。怒られると思っていなかった。

悪くない。そう言われることはわかっていたが、責める自分を叱ってくれるとは思っていなかった。それがミズカの気持ちを少し楽にしてくれた。

「ありがと」

口角を上げるミズカ。マサトもニコっと笑って返した。とはいえ、別に問題が解決したことにはならない。
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