20章 中学の試練

「ハルカ……」

ミズカは、自分がどれだけ心配されているのか理解できた。ハルカがこんな必死になるとは思わなかった。顔を歪める。

しかし、話して良いのだろうかと不安になる。実際、この間、カスミにも話せなかった。ミズカは今、自分の気持ちがどこにあるのか、よくわからないでいる。

そんなミズカの肩に優しく、誰かの手が触れた。振り向くとそこにいたのはサトシだった。その後ろにはタケシとマサトがいる。

「話せよ。心配してるのはハルカだけじゃないんだぜ?」

優しいサトシの声。その言葉にマサトもタケシも頷いた。皆みんな、ミズカの様子には気づいていた。

ただ、この話を持ち込むとミズカが、嫌な気持ちになるんじゃないかという優しさで、黙っていたのだ。もちろん、ハルカもそのつもりだった。しかし、ミズカの様子を見ていてたえきれなくなったのだ。

「みんな……」

そんな皆の思いと優しさが伝わりミズカの目にジンと涙が出てきた。ピカチュウがそんなミズカの胸に飛び込んでくる。

何をしているんだろうか。

ミズカだって、とっくに彼らを頼って、この世界に来たことに気づいている。ここへ来るとき、声に出さないまでも無意識に彼らのことを思い浮かべていた。

「……わかった」

決心した。もとの世界であった部活のことを話すことにした。ミズカは再びその場に腰をおろす。

ハルカ達もその場に座った。湖に沿い一列になっている。ミズカは深く深呼吸をすると、震えた声で話し始めた。

「あたしさ……、今、部活で無視されてるんだ。同級生に……」
「……えっ?」

ハルカ達は、ミズカの言葉に耳を疑った。部活のことだとは思っていたが、予想外の話だった。

「それって……、イジメ?」

恐る恐るハルカが聞く。質問にするつもりはなかったのだが、つい聞いてしまった。

「かもね」

ミズカは苦笑いをしながら、ボソッと答えた。すかさず、サトシがツッコむ。

「それ、かもね。じゃなくて、完璧虐めだぜ……」
「しかし、なぜミズカが?」

タケシが聞く。タケシも、それから驚いたハルカ達も、ミズカが虐められるような性格ではないと思っていた。間違ったことは間違いだとハッキリ言う。言える性格なのにも関わらず、無視されているとはどういうことか。甚だ疑問だった。

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