20章 中学の試練

「……カ、ミズカ!」
「え?」

ハルカに呼ばれ、ふと我に返る。

「もう、4、5回呼んでるかも!」
「ご、ごめん」
「隣……、良い?」
「もちろん」

ミズカのその返事を聞き、ハルカは隣に座った。ハルカは湖を眺める。この澄んだ湖を見て、ミズカはぼーっと何を考えていたのだろうか。

「何か、あったの?」

無論、ハルカはもとの世界でのことを聞いている。もっと言うと部活のことを聞いている。

ミズカは、ハルカの気持ちに感謝した。しかし、言う気にはなれない。ここには、心配を掛けに来たのではない。自分は少し逃げたくてここへ来ている。少しでも気持ちを落ち着けたくて。ハルカ達と会うつもりなんてなかった。

ミズカは首を横に振った。

「なんでもないよ。さあて、久々にポケモン捕まえようかな」

なんともないような風に言って立ち上がる。しかし、ハルカはミズカの腕を掴んだ。

「ミズカ!!」

思ったよりも、その声は大きくサトシ達にも聞こえた。しかし、そんなことは気にせず、ハルカはミズカの目をじっと見上げる。

「抱えこんじゃダメかも!」

いつにない強い口調にハルカ。ミズカは、ビックリして目を見開く。ハルカは、ミズカの腕を放すと静かに立ち上がった。

「お願い、話して? あたし、何もできないかもしれないけど……。聞いてあげることならできるから……」

ハルカからすると、ミズカはこのままどこかに消えてしまいそうな気がした。ここにもし、少しでも助けてほしいという気持ちで来たのなら、それを助けるのは自分たちの役目だ。

きっと今日、会えたのも、そういう巡り合わせがあったから。サトシから手鏡のことを聞いた。ミズカが行き先を伝えれば、そこに出られるみたいだと。

だとしたら、少なくともミズカは、少しは会いたいと思ってくれたのではないか。だから、ハルカは必死だった。
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