20章 中学の試練

「もとの世界ではどうなの?」

ハルカは思い切って聞いてみる。こないだカスミに言われたことが引っかかっていた。前回は意味がわからなかったが、今はわかる。

しばらく来ないと言ったのに来た。
突っ込めば突っ込むほど逃げるような言い訳を並べている。
もとの世界の話をしたくなさそうだ。

証拠に今、ミズカは思わず顔をしかめる。

「何が?」

ミズカは聞き返すと、手を動かしてご飯を食べる。目を逸らされた。何をツッコまれたくないのだろうか。考えられるのは、一番ミズカの生活に影響している部活ではないのだろうか。

「ほら、部活とか……」

ハルカは、恐る恐る口にする。ミズカの手は一瞬止まった。しかし、すぐにパンを口に運び、コップに入った水を一気に飲み干し、再びコップを置いた。

「別に……? 平気」

答えるミズカの言葉からは楽しいがない。

「ミズカ……」

急にハルカは声のトーンを落とした。真剣な表情だ。何かあったのだと確信がついた。自分と旅をするようになってから、ミズカがこの世界に来るのは少ないが、自分のやりたいことをそんな表情で平気だと言うタイプでないことはわかる。

「無茶してない……?」
「へ?」
「ミズカの性格って、かなり無茶するタイプでしょ? 部活でも無茶してるんじゃないかな……て」

何が原因かはわからない。だが、きっと部活でなにかあった。ハルカは、ミズカの目を見つめた。ミズカは何も言わず目を逸らす。

そして、シチューを全部飲み干すと、

「ごちそうさま」

と、ふらりと席を立ち、湖の前に座った。ミズカはハルカの問いに答えられなかった。質問に答えなかったことを変に思われただろう。ハルカはどう思ったのだろうか。それでも、部活のことを思い出すと、胸がキュッと痛んだ。

周りからの冷たい視線……。シカト……。夏休みに入って、いつも一人ぼっち。正直、やりたかったことをやっているのに、辞めたいと思っている自分がもどかしい。

ポケモン世界で過ごしたい。もちろん、そんなことは現実逃避だとわかっている。ミズカの住む世界は、ここではない。

目の前にあるものはすべてが輝いている。湖は馬鹿みたいに澄んでいて、それがミズカには眩しい。一生ここにいられたらとさえ思う。

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