20章 中学の試練

「ふ~ん、そうなんだぁ~」

マサトは納得してくれたようだ。あまり怪しまれずにすんだらしい。ミズカは安心した。

「なんか……、腹減ったな……」

サトシが急に言い出した。

「あたしも……」

ミズカもお腹を擦りながら言い出す。考えてみれば、最近はろくにご飯を食べていない。食欲が出ない。夏バテもあるかもしれないが、原因は精神的なものだということをミズカはわかっていた。

しかし、虐めとは無縁のこの場所で、お腹が空かないわけがない

「よし、じゃあ食事にしよう」

タケシがリュックを下ろす。

「やったー!」
「この湖の前で食べるのは幸せかも!」

ミズカとハルカが顔を見合わせて笑う。そして、ミズカ達も荷物を下ろすと、タケシが食事を作っている間、遊ぶことにした。

湖を沿って歩いていると、一面花畑の場所があった。ミズカ達は目の前の素敵な光景に歓声を上げる。

「すごい……。こんなの久しぶりにみた!」
「ミズカ、行くわよ!」
「えっ?」

ミズカはハルカに引っ張られる。ハルカが、勢い良くミズカを引っ張ったため、ミズカはバランスを崩した。ハルカを押す形になり、二人は花の海に頭から突っ込む。

「おい、ミズカ、ハルカ、大丈夫か!?」

サトシが呼ぶ。二人は、大量の花の中からヒョコッと顔を出す。そして、顔を見合わせる。互いに花びらがあちらこちらにくっついていた。ミズカとハルカはおかしくなって笑い始めた。つられて、サトシとマサトも笑い始める。

――こんなに笑ったの久しぶり。

ミズカは笑いながらふと思う。もとの世界では心から笑えなくなっている自分に気づく。今は、そんなことを忘れて、思い切りはしゃけでいるそれが堪らなく楽しい。

「そろそろ、ご飯じゃない?」

マサトがタケシのいる方向を見ながら言う。ミズカ達が、さっきの場所へ戻ると、ちょうどタケシがシチューとパンをテーブルに並べているところだった。

「いっただきまーす!」

ミズカ大口を開けてシチューを一口加えた。

「そういえば、ミズカ」
「何?」

ハルカに話しかけられ、手を止めた。口に入っている物を飲み込む。
13/19ページ
スキ