20章 中学の試練

――来ないって言ったのに来ちゃった……。

ミズカは大きく大の字になって空を見ていた。目の前には綺麗な湖がある。

――空って……、こんなに青かったっけ……。

目には、雲一つない青空が映っている。この景色はもとの世界と差ほど変わらないが、ミズカにとっては全く違うものと言える。もとの世界でも、この青空は幾度と見ている。

部活をやっている時だって、いつも空を見ていた。しかし、その時は苦しさを紛らわすために見ているだけ。空も雲も目には映っているものの、今みたいにはっきりは見えない。

――まいっか、別にサトシ達に会う気はないし……。

あれから、2週間と経っていないのに来てしまった。おそらく、この世界だと1週間も経っていない。サトシ達を探す気はない。今は何も考えたくない。ただ、空を見てボーッとしていたかった。

しかし、そうもいかないのが普通だ。悲しい事はあまりすぐには忘れられない。況してやこの悲しい事はもとの世界で毎日のように継続している。

――もとの世界に帰りたくないな……。

そんな事を思いながら空を見る。しかし次の瞬間、自分の目には空ではなく、仲間の姿が映った。驚きのあまり、ミズカは飛び起きる。

「み、みんな! どうして!?」
「どうしてって、こっちのセリフだぜ……」

サトシがため息混じりに言った。どうやら、たまたま、ミズカを見つけたらしい。

「ミズカ、なんでいるの?」
「かもかも、しばらく来れないようなこと言ってたかも」

マサト、ハルカが言いたい放題に言う。

「そうだっけ?」

とりあえずミズカは惚ける。が、内心ヒヤヒヤしていた。背中には汗が流れる。

「そうだよ。夏休みは部活で忙しいからって言ってただろ? 数日しか経ってないぜ?」

サトシは、この間、ミズカが言っていたことを口に出す。数日しか経っていないのに、ここにいることにサトシ達は不審に思う。

そして、彼らに過ぎっていたのは、こないだのカスミの言葉。ミズカが心配そうだった。

「あぁ~。たまたま、今日は部活なかったの」

嘘ではない。本当に今日は部活が休みだ。でなければ、来られない。他にも言い訳はないか必死に探す。

「でも、部活が休みの日は疲れて寝ちゃってるって言ってたよね?」

マサトが鋭い所をついた。うっと言葉に詰まりながらも、なんとか絞り出す。

「いやぁね……。もうすぐ、もとの世界では一軒家に引っ越すの! それで、ダンボールだらけで、落ち着けなくてさ……」

ミズカは苦笑した。これも嘘ではない、本当に一軒家に引っ越す。そして、家はダンボールだらけだ。 下手に黙ったら、突っ込まれる。怪しまれる。そんなことを思いながら誤魔化す。

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