20章 中学の試練

「……ごめんごめん!」

自然と笑いが込み上げた。

「何笑ってるの?」

ハルカがカスミの横からヒョコッと顔を出した。

「なんか……。安心した……」
「安心……?」

意味がわからず、カスミとハルカは顔を見合わせた。

「いいの。こっちのこと」

怒っていても、自分のことを一番に思ってくれていた親友にミズカは感謝した。だからこそ、やっぱり今回のことは話したくない。 申し訳なさを感じが、今はこれでいい。

エーフィと目が合った。エーフィは口角を上げて頷いてくれた。

「ねぇ、ミズカ! カスミと親友になったキッカケはなんなの?」
「それ僕も聞きたいな」

ハルカとマサトはミズカに迫った。いきなりだったもので、ミズカは思わず一歩後ろに下がる。

「そう言えば、俺も知らないな」
「俺も!」

後ろからタケシとサトシも言う。理由は当事者しか知らない。ミズカとカスミは顔を見合わせ、ニッと笑った。

「ひみつ~」

声を揃えて二人は言う。

「え~」

今度は聞きたい三人が声を揃えた。タケシは苦笑している。

「教えてほしいかも!」
「どうせたいしたことないんだろ?」
「たいしたことだよ!」

ハルカとサトシの言葉に、ミズカはムッとした。けれども、この距離が心地よい。ずっとこうしていられたら良いのに。本気でそう思う。

そして、次に来たときには、すべて解決していてほしいと思った。話をして、なんで話さなかったのか怒られながら、なんの柵もなく仲間たちと笑う自分でいたい。今度は無理に偽りの笑顔なんてしなくて良いように。

「ミズカ、教えて!」
「それはちょっと……」

ミズカはマサトに攻めを食らう。そして、ミズカはリュックから手鏡を出した。

「てか、あたし帰るね」
「は?」

ミズカの急の言葉に5人は彼女に注目した。マサトがミズカを見上げる。

「もう帰るの?」
「うん。今日はたまたま部活休みだったから、友達と遊びに行くフリをしてこっちに来たの。早めに帰って、明日の部活の準備しないと」

そういうと、5人は少し残念そうにした。エーフィも耳を下げている。

「あと、これから夏休みで部活忙しいから、しばらく来られない。休みの日も疲れて寝ちゃってると思うし」
「そっか、部活で忙しいのかも!」
「それじゃ。皆、元気でね!」

ミズカはニコッと笑い帰って行った。それをカスミは素直に見送った。

ミズカの背中が消えていく。

――あたしが、あんたの親友として出来ること……。他にあるわよね。

ミズカが頑なに話さないのは初めてかもしれない。話さないのなら、せめて帰るときは安心して帰ってほしい。だから、カスミは変な意地を張るのをやめた。もし何かあって、ここに逃げたくなったら、すぐに逃げ込めるように。

「カスミ……?」

ミズカが消えた先を見つめるのを不思議に思ったサトシはカスミの顔を覗いてきた。カスミは我に返った。

「皆に、お願いがあるの」
「お願いってなんだよ」

サトシは顔をしかめた。

「ミズカの様子が変だから、ここに来たときには頼んだわ」

今、カスミができることは、彼らに頼むことだ。ミズカの悩みが消えてなくなりますように。カスミは抱いていたルリリをキュッと抱きしめた。
11/19ページ
スキ